ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3147)

 自滅する労働貧困層

 いわゆるワーキングプア(以下、労働貧困層)の若者たちほど、社会保障をバッシングする傾向がある。

 生活に余裕のある人が「将来、何が起きるかわからない」と謙虚な姿勢を取る一方で、明日の生活も定かでないような労働貧困層が「生活保護の受給水準を引き下げろ」と騒いでいる。これは不思議な現象だ。

 労働貧困層の収入が、生活保護受給者並だからといって、それは生活保護の制度とは関係ない。単に八つ当たりをしているだけだ。労働貧困層の収入が低いのは、あくまで本人の問題であり、責任のはずだ。

 例えば、アニメ制作で収入が月5万円の人がいとする。こういう人でも案外、3畳1間の部屋を月2万で借りて「3食、モヤシとインスタントラーメン」で生計は立てられたりする。

 月5万円の収入で「3食、モヤシとインスタントラーメン」で生活するのは、本人が好き好んでやっていることだ。嫌ならやめればいい。他人に自慢することではないし、まして強要することでもない。

 だから、「アニメ業界で働いている俺は3食、モヤシとインスタントラーメンなのだから、生活保護受給者の食事はこれ以下にしろ」という主張は、正当ではない。

 一方、生活保護を必要とする人は、通常、他に選択肢がない。

 選択の余地がある人の勤労意欲のために、選択の余地がない人の生活水準を決めるのはフェアではない。

 働いているのに、生活保護受給者と同じ生活水準が嫌なら「もっとカネを稼げばいい」というだけの話だ。

 お金を稼ぐ方法は色々ある。働いても低収入しか得られないのは、たぶん「仕事ができない」からだ。

 根本的な話をすると、僕は必ずしも「働かざる者食うべからず」とは思っていない。

 映画館のチケット売場が自動発券機にリプレイスされたのを見て思ったが、生身の人間の仕事はどんどん不要になってきている。

 組織においても、圧倒的な成果を出すのはごく一部の人間で、他の人はその分け前にあずかる、という構図がある。

 単純労働が減り続け、世界がより便利になるほど、仕事にあぶれ、社会保障を必要する人は増えるのだと思う。

 現在、定型業務や単純労働をしている労働貧困層の多くは、いずれ仕事を失い、将来、社会保障を必要とすることになる可能性が高い。しかし彼らは、わずかなプライドを守るために、あえて自滅の道を歩むようだ。

山田宏哉記

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