ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3148)

  「成長機会」の格差論

 組織で働いていると、ついその組織の中での常識が、世の中の常識だと錯覚してしまう。これは僕自身も例外ではない。

 その一方、雑誌の特集などで会社ごとの年収や給料の比較を見ると、動揺したりする。勤務先の会社による収入の格差は大きく、自分で常識だと思っていることが、必ずしも世の中のスタンダードではないことに気付かされる。

 一般に20代をフリーターで過ごすと致命的なのは「アルバイトがするような単純作業では実務能力の伸びが期待できないから」と言われる。たぶん、その通りなのだろう。ただ、僕が問題にしたいのは「では、社員として働いていれば、成長の機会はあるのか」という点だ。

 私見では、会社によって収入の格差があるのと同様に、「成長の機会」にも大きな格差がある。但し、これは明示的な報酬と比べると、可視化されにくい。どの企業でどのように働くと、どの程度の実力がつくか。これは判然とはしないが、極めて重要な点だ。

 OBが「引く手数多」となる企業がある。このような企業には、成長機会も数多くあると考えられる。反対に、退職した人が路頭に迷うような企業もある。こういう企業には、成長機会はあまりないと考えられる。

 ビジネスの能力を伸ばすに当たって、組織はいわばエスカレーターの役割を果たす。エスカレーターの速度は会社によって大きな差があり、高速で上昇するのがある一方、下降してしまうものもある。自分がいる組織のエスカレーターの速度が他と比べて速いのか、遅いのか。その判断は難しい。

 「居心地のいい会社」というのは案外要注意で、ビジネスの能力向上という点から見ると、「下りエスカレーター」の場合もある。

 おそらく多くの人にとっては、自分が今いる環境に、どの程度の成長機会があるのか、正直よくわからないと思う。もちろん、宣伝メッセージに「社員が成長できる会社です」とあっても、現実がその通りとは限らない。

 リスクヘッジの点からは、「自分の会社には、成長機会があまりない。競合他社に負けている。その分、自力で能力を磨かなければならない」と考えた方がいい。この認識が正しくても、間違っていても、大きく負けることはない。

 また、会社毎に成長の機会に格差はあるものの、それ以上に組織内での職務やポジションの制約を受けると、僕は思う。

 これを踏まえた上で、今いる環境で具体的にどのような戦略を取ればいいか。

 そのヒントは「仕事の報酬は仕事」という言葉に含まれていると思う。日本企業には「次の仕事で報いる」という考え方がある。成果を出した人には、より挑戦のしがいのある仕事を割り当てる。

 なぜ、仕事が仕事の報酬になり得るのか。それはおそらく、仕事の中に「成長の機会」が含まれているからだ。だから僕は、「仕事の報酬は仕事」は「仕事の報酬は、成長の機会」と言い換えられると考えている。

 だから、仕事を通して成長するための王道は結局、「仕事で成果を出し、次の仕事を獲得する」というものだ。そして、競合の情報が正確にはわからない以上、ここに全力を尽くすしかない。

山田宏哉記

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