ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3149)

 "鶏口牛後"は本当か

 一般に「鶏口となるも、牛後となるなかれ」と言われる。

 大きな集団の底辺にいるよりも、小さな集団の先頭に立て、といった意味だ。心構えや精神論としては、おそらく正しいだろう。

 但し、僕はこの格言は、単純な二項対立に落とし過ぎていて、あまり現実的ではないと考えている。  

 殆どの人は、集団のトップに立つことも、底辺を彷徨うこともない。むしろ、中間のボリュームゾーンとどう関わるかが、対組織戦略においては要となる。

 一般に組織の成員は上位層、中間層、下位層に大きくわけることができる。比率はだいたい、上位層が2割、中間層が6割、下位層が2割くらいになる。

 それでは、自分のポジションがどの辺りに位置するのが有利(有益)なのか。

 実は学校(能力研鑽の場)と職場(成果を出す場)では、理想的なポジションが異なる。

 志望校を選ぶ時は、自分の実力が中間層と下位層の境界くらいに位置する学校を狙うのが得策だ。学校とは「能力研鑽の場」である以上、周囲に優れた手本を示す人間が多い方が、自分の実力も引き上げられる。

 能力開発においては、「ついていくのがやっと」くらいの組織に属するのがいい。

 「集団の最優秀者になる」というのは、本人の成長にとって、必ずしも良い影響を与えない。井の中の蛙のくせに、「周囲は馬鹿ばかり」となり、変な勘違いをしてしまうからだ。

 職場を選ぶ時は、自分の実力が上位層と中間層の境界線くらいに位置する組織を狙うのが得策だ。職場とは「結果を出す場所」であり、平均以下のパフォーマンスでは、組織の都合でキャリアをズタズタにされてしまう。

 大手の広告代理店などは優秀な人材が集まってくるようだが、社内の競争を勝ち抜くのは難しく、負け組には悲惨な境遇が待っている。「背伸びをして一流企業に就職する」というのは、虚栄心は満たされるが、合理的な選択ではない。

 当然だが、企業は高いパフォーマンスを出す社員を優遇する一方で、低いパフォーマンスの社員を冷遇する。これは単に地位や報酬だけでなく、「腕を磨ける仕事」を優秀な社員に振る一方で、「どうでもいい仕事」をお荷物社員にやらせることも含まれる。

 それでもやはり、能力開発のことを考えれば、組織内に「手本となる優秀な人」がいることはとても大切だ。 

 従って、社会で勝ち残るための合理的な対組織戦略は「自分が100人中80位前後になる学校に入学し、100人中20位前後になる企業に就職する」となる。

 鶏口牛後とは言うものの、集団の中でトップやビリになるのは、極力、避けた方がいいだろう。

山田宏哉記

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