ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3151)

 "謙虚さ"を振りかざす愚

 時に、人生の先輩方から「生意気だ」とか「謙虚さが足りない」と言われることがある。

 ありがたきお言葉! 今回の指摘を深刻に受け止め、今後の参考にさせて頂く所存であります。

 実のところ、僕は自分では比較的謙虚だと思っている。

 自分の言動に至らない点があれば、反省もする。わからないことがあれば、知ったかぶりをしない。他人から指摘を受ければ、理にかなったものであればお礼をして対応する。  

 物事がうまくいかない時は、自分の能力不足に原因があると考える。言い訳や責任転嫁をすることは、まずない。

 当たり前のことだけれども、これができている人はあまり多くない。"謙虚さ"を振りかざす諸先輩を含めて。

 但し、諸先輩が意味する「謙虚さ」とは、実はそういうことではなかった。

 彼らが要求していた「謙虚さ」とは、実のところ「俺に敬意を払え」という意味でしかなかった。さすがに「忠誠心」とは言いづらいので、「謙虚さ」と言い換えていただけだった。

 僕は仕事の人間関係においては、実績を最も重視している。優れた実績を残した人には、肩書きや入社年次等には関係なく、尊敬の念を持っている。一方、肩書きや入社年次がどうあれ、仕事の実績がない人に尊敬の念を抱くことはない。

 案の定、僕に対して「謙虚さが足りない」などと言いがかりをつけて来た人には、大抵、大した実績がなかった。

 要するに「俺の方が肩書きや経験年数が上なのだから、もっと敬意を払え」ということだった。しかし、誰に敬意を払うかは、僕自身が決めることであり、他人から指示される類のことではない。

 年長者だからといって、朝からパチンコに興じるご老人を尊敬することはできない。

 たいして実力がない人に「さすがですね!私には到底できませんよ」みたいなゴマをするのは、単純に嫌なのだ。美意識が許さないし、結果的に相手のためにもならない。

 但し、「実績がない人には敬意を払わない」というスタイルは、伝統的な日本企業の文化とは相性が良くない点は、認めざるを得ない。

 今にして思えば、もう少し摩擦を和らげる方法なり態度があったし、その工夫はもっと追究するべきだったと思う。

 例えば、上司と相性が悪いと、仕事で成果を出すほど、「生意気だ」「謙虚さが足りない」みたいな言いがかりをつけられて、逆に評価が下がったりする。

 僕はそういう組織のリアリズムに疎かった。この点は真摯に反省するしかない。

 いずれにせよ、僕は仕事そのものではない部分で「謙虚さが足りない」みたいな評価を受け、その挙句、ホワイトカラーから肉体労働者に職種転換となってしまった。

 その件は「長幼の序を守らない奴はこうなる!」という格好の見せしめになったと思う。僕自身、さすがに「自分には謙虚さが足りないのではないか」と悩んだものだ。

 長幼の序を唱える謙虚な諸先輩は、上にゴマをすり、下の者をいじめるのが上手だった。さすが、処世術に長けていらっしゃる!

 しかし、それでも結局、謙虚な諸先輩に対する尊敬の念は全く生まれなかった。むしろ逆に軽蔑するようになってしまった。

 謙虚さが足りない僕は、冷や飯を食わされても、腐らなかった。どのような仕事の中にも面白さを見つけるように心がけた。週末は震災ボランティアで汗を流した。

 結果的に、僕は新しい環境で仕事仲間に恵まれ、圧倒的な成果を出すことができた。これは本当に幸運なことで、とても感謝している。

 結局のところ、「謙虚さ」というのは、自戒の言葉としてのみ意味を持つのであり、他人に要求する類のものではない。

 誰しも、気に食わない人に対しては「謙虚さが足りない」と評価するものなのだ。これは単に「気に食わない」と言っているのと同じで、実は明確な定義も理由もない。

 長幼の序を唱える謙虚な諸先輩からすると、僕は目障りな存在だったと思う。それくらいはわかっている。但し、だからと言って、変な遠慮するつもりはない。

 いやはや、生意気ですみませんね。

山田宏哉記

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2012.6.10 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ