ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3153)

 営業とマーケティング - 訪問販売と集客の戦略 -

 企業であれ、個人事業であれ、売上を伸ばす手法には大きく分けて2通りある。プッシュ型の販売とプル型の販売だ。

 プッシュ型の販売とは「こちらからお客さんのもとに売りにいく」ものだ。典型的な例を挙げれば、飛び込み営業や訪問販売だ。プッシュ型の販売は、営業部門が主導するのが一般的だ。

 一方、プル型の販売とは「お客さんに買いに来てもらう」ものだ。典型的な例を挙げれば、店舗型やウェブサイトでの販売形態が相当する。プル型の販売は、マーケティング部門が主導するのが一般的だ。

 僕たちは普通、お客の立場だと、訪問販売員を疎ましく思い、必要なものがあれば、自ら店舗に出かける。ところが何故か、企業社会では「体力勝負の飛び込み営業が効果的だ」みたいな考え方が幅を聞かせている。

 企業社会では、飛び込み営業をかける要員を俗に「ソルジャー」と呼んだりする。通常、商品そのものの競争力に欠ける企業は、体力勝負の「ソルジャー」が営業攻勢をかけることで、業績をカバーする(但し、こういう職種は若者には不人気となっているようだ)。

 もっとも、売り込む商品が顧客にとって重要度の低い商品ならば、飛び込み営業の重要性は増す気はする。例えば、清掃サービスや事務用品などは、顧客もあまり関心がなかったりするので、案外、「売り込んだ者勝ち」みたいなところがある。

 さて、個人事業として、商材を扱っているとして、それを売りに行くか、お客さんが来るのを待つか、その判断は難しい。体力勝負でプッシュ型の販売攻勢をかけるか、マーケティング主導でプル型の販売に注力するか。

 プッシュ型の販売には時間というコストがかかる。しかも、飛び込み営業が成功しなければ、投下したリソースは全く無駄になる。組織にいれば給料は出るだろうが、成果に結び付かない飛び込み営業は、仕事とは呼べない。

 一方、プル型販売の仕組み作りにもコストはかかるが、ウェブに仮想店舗を作ることができる時代になり、コストパフォーマンスは格段に上がった。更にウェブサイトであれば手離れが良く、365日24時間の稼働が可能になる。

 意外と忘れられがちだが、「仕事を獲得するための活動」は厳密には仕事そのもの(実稼働時間)に含まれない。ここは組織人とフリーランスで感覚が分かれるところだろうが、フリーランスの感覚の方が正しい。

 極端なことを言えば、顧客への貢献と業績に直結する作業をする時間のみが、実稼働時間であり、その他のことは本質的には「余計な仕事」である。

(組織で働くメリットのひとつは「仕事を獲得するための活動(教育訓練や飛び込み営業など)」に対しても、給料が支払われる点にある。)

 それを踏まえて言うなら、企業にとっても、個人事業にとっても、商品企画と実際の生産が最も大切な部分だ。飛び込み営業にリソースを割くと、その分、商品開発にしわ寄せがいく。

 通常の企業では、飛び込み営業型のソルジャーの数が多く、マーケティング部門の人員の数は数は少なくなりがちだ。

 その理由は、飛び込み営業はコストパフォーマンスが悪く、人海戦術が必要になるからだと僕は考えている。一方、マーケティングはコストパフォーマンスが高く、それほど多くの人的なリソースを必要としない。

 だからこそ僕は、個人事業としてやるなら、プッシュ型の飛び込み営業は厳選した上でピンポイントで行い、あくまでプル型の集客販売をメインにするべきだと思っている。

山田宏哉記

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2012.6.11 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ