ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3156)

 "雑魚キャラ"が果たす役割

 「敵の強さを示すために、味方の雑魚キャラがやられる」というのは、ストーリー展開の常套句だ。戦場で名無しの兵士たちが強大な敵に立ち向かい、無惨にやられるパターンは映画の定番シーンでもある。

 "雑魚キャラ"の存在は過小評価されているのではないか。

 僕はそう思っている。更に具体的に言うと、組織には「仕事のできない人」も必要だと思っている。

 10人の組織があるとしたら、ハイパフォーマーが2人、中間層が6人、ローパフォーマーが2人といった具合に分かれることが多い。

 こういう時、若い人は「下位層の2人はクビにした方がいい」と考えがちだが、案外、そうでもない。

 組織で働く上で、「自分の実力が一番下」というのは、とても嫌なものだ。「自尊心が傷付く」ということもあるが、業績が悪くなった折には真っ先に切られることになるからだ。

 下位2割の人は「炭鉱のカナリア」の役割を果たす。何かあれば、真っ先にクビを切られる。だからこそ、中間層の人たちは「あの人がクビにならないうちは、自分も大丈夫」と判断することができる。

 要するに、下位2割の人がいるからこそ、中間層の6割は安心して働くことができる。

 悲しいかな、人間は「自分より下の存在」を求める動物だ。

 だからこそ、下位層2割のクビを切ると、中間層の6割が「次は自分の番ではないか」と萎縮してしまう。そしてボリュームゾーンのモラルダウンにより、組織全体のパフォーマンスも低下する。

 組織には、そういう力学が働いている。

 では、不幸にして、自分が組織の中で下位2割に入った時はどうするか。「下位層から脱却すべく努力する」というのはひとつの選択肢だが、僕は「"雑魚キャラ"に徹する」のもありだと思っている。

 「"雑魚キャラ"に徹する」とはどういうことか。『ドラゴンボール』において、クリリンやヤムチャが果たしたような役割を担うことだ。自分自身の戦闘力(実務能力)が低いなら、戦闘力の高い仲間の補佐に徹する。それは決して恥じることではない。

 『ドラゴンボール』の世界において、クリリンとヤムチャは弱かった。主要人物たちと一緒に修業をしたものの、素質と才能に欠けたため、努力してもさほど強くなれなかった。

 でも、彼らは「いい奴」で、愛されていた。人間世界も、同じような事例に溢れている。

「仕事のできない人はクビにするべきだ」という意見は、「『ドラゴンボール』にクリリンとヤムチャは不要だ」という意見と大差がない。

 確かに、『ドラゴンボール』においてクリリンとヤムチャは戦力外だったが、彼らが敵にボコボコにされるからこそ、主要人物の強さが引き立っていた。

 きっと誰もが主役級の活躍をしようとするから、苦しいのだと思う。

 たとえ仕事ができない"雑魚キャラ"であっても、自ら進んで"雑魚キャラ"に徹して仲間を補佐することができれば、組織の中で必要とされる人になることができるはずだ。

 山田宏哉記

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2012.6.16 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ