ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3161)

 反知性主義の国・日本

 日本には「知的なものに対する軽蔑」や「インテリに対する僻みや反感」が色濃く根付いている。恥ずかしながら、僕は実社会で働き始めてようやく、このことに気付いた。

 反知性主義は、学校教育の段階で既に表に現れる。日本の学校では、真面目に勉強する生徒が「ガリ勉」と呼ばれ、バカにされる。

 もちろん、学校教師は「勉強をしなさい」と言うが、生徒同士の会話では「自分は全然勉強をしていない」ことが強調される。

 これは成績が優秀な生徒にも、落ちこぼれの生徒にも当てはまる。学校秀才は「隠れて勉強する」という点が違うだけの話だ。

 大半の日本人が、嫌々ながらも勉強をするのは、あくまで「テストでいい点を取るため」であり、「就職に有利な学校に進学するため」だ。知的好奇心で勉強をする人間は、基本的に変人扱いをされる。

 大学時代、履修する講義は、「単位の取りやすさ」が基準だった。そのための情報誌を販売してビジネスをしている学生団体もあった。学生が教員に質問することの大半は、試験と成績に関する事柄だった。講義内容に関して、突っ込んだ質問をする学生は、ほとんどいなかった。

 多くの人は、大学に合格する瞬間に学力がピークに達し、後は歳を取るにつれて、知的レベルが低下していく。中高年になる頃には、見るも無残な姿となる。

 但し、そんな日本の中高年であっても、厄介なことに、多くの日本企業で彼らは要職にある。「なぜ、こんなボンクラが社長なのか」と疑問に感じる企業も少なくない。かつては、義理人情だけで出世できた時代もあったのだ。

 実社会で働くようになれば、職場酒のようなイベントで、ただでさえ少ない勉強時間を更に奪われることになる。

 僕は、職場酒には「相互監視」と「相互牽制」というネガティブな目的もあると思う。会社の仲間と夜遅くまで酒を飲めば、その分、自主学習をする時間がなくなる。要するに、勤務時間外の時間の使い方で、能力差がつかなくなる。

 更に言うと、知的レベルが低下した中高年層も、プライドだけは高い。彼らは、自分よりも知的レベルの高い若手に対して、「生意気だ」とか「謙虚さが足りない」などの言い掛かりをつけて、足を引っ張る。場合によっては、懲罰人事を仕掛けてくる。

 従って現状では、日本では勉強そのものが好きな人は、研究職につかない限り、周囲から変人扱いされて、バカにされることになる。

 しかし、アカデミック・ポストは限られている上に、何故か競争はやたらと激しい。更に博士課程に進んで研究職につけないと、キャリアとして致命的になってしまう。

 以上、予てから非常に気になっていて、痛い目にも遭ってきたことだが、全体像が見えずにモヤモヤしていた。今回、それをようやく言語化することができた。

 要するに、日本は反知性主義の国なのだ。

 山田宏哉記

【関連記事】
日本人の7割には、中学の教科書レベルの知識もない
(2012.6.23)
読書を実務に活かす暗黙のプロセス (2012.6.23)
教職に逃げる大人たち (2012.6.21)
なぜ、日本企業は社員の自己研鑽を嫌うのか (2012.6.20)
"雑魚キャラ"が果たす役割
(2012.6.19)
虚構・秋元某の女衒術 (2012.6.16)
営業とマーケティング - 訪問販売と集客の戦略 - (2012.6.13)
「工場閉鎖」のシナリオに備えよ (2012.6.12)
日系ブラジル人の街 群馬県大泉町探訪記 (2012.6.11)
優遇される人材、冷遇される人材 (2012.6.9)
"鶏口牛後"は本当か (2012.6.9)
「成長機会」の格差論 (2012.6.8)
自滅する労働貧困層 (2012.6.7)
あの人が嫌われる理由 (2012.6.4)
新参者の心得 -いかに組織に適応するか-
(2012.6.3)
知識と実務のあいだ -学校秀才は"仕事で使えない"か-
(2012.6.2)
「結果が全て」の世界で生きる (2012.5.29)
ノマドが嫌う日本企業(2012.5.27)
なぜ、あの人は長時間残業をするのか(2012.5.26)
最近の若者はバカばかり(2012.5.26)
いかに"集中力"を発揮するか(2012.5.23)
辺境からの企画論(2012.5.20)
高橋俊介(著)『21世紀のキャリア論』覚書(2012.5.20)
競争優位としての"集中力"(2012.5.19)
ビジネスパーソンがヨガをするべき理由(2012.5.14)
岩盤浴の秘密 ―なぜ、女性に人気なのか―(2012.5.13)
ヤンキー文化圏の幸福な人生(2012.5.11)
学習能力向上の戦略(2012.5.1)
性的リソースの分配論(2012.5.1)
"才能の優劣"を考える(2012.4.15)
ビジネスに活かす「サル山の論理」(2012.4.7)
"自動改札機の導入"で消える仕事を考える(2012.3.3)
"人間関係のシャッフル"を考える(2012.2.22)
「異性のパートナー選び」に活かすマーケティング(2012.2.12)
実務家からみた"学校教育の本質"(2012.1.3)
プレイボーイはビジネスの強者か?(2012.1.1)
「カネのため働く」という建前(2011.12.25)
"就活イベント"のビジネスモデル(2011.12.18)



2012.6.24 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ