ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3162)

 「仲間外れ」の構造

 ふと、閃いた。日本人の行動の多くは「仲間外れになりたくない」という感情に基づいているのではないか。

 「当たり前じゃないか」と言われるかもしれないが、僕には欠落している感覚なので、これまで気付けなかった。

 人間は誰を「仲間」と思うのか。経験と観察に照らすと、これは割とハッキリしている。「自分と似た人」だ。

 人間は無意識に性別、年代、国籍、外見、性格、知的水準などで他人をフィルタリングしている。そして、自分と共通項の多い人同士で群れる傾向がある。見知らぬ者同士が集まる場所であっても、やはり自分に似た人の方が声を掛けやすい。

 日本では、日本人同士の個体差がさほど大きくないので、「似ている」「似ていない」の判断が些細なことになりやすい。

 学校のクラスで、生徒の自主性に任せて「グループ分け」をさせると、見事に似た者同士がグループになる。こういう時、自分が「余りもの」になるのは、結構辛いものだ。

 ついでに言うと、学校のクラスの「グループ分け」で「余りもの」になる生徒は、「いじめられっ子」である可能性が結構ある。

 注目すべきなのは、「余りもの」になる生徒が傷付くのはもちろんだが、実は「余りもの」の生徒を見つめる「普通の生徒」も、実は背筋が凍る思いをしているであろうことだ。

 「普通の生徒」であっても、「余りもの」になる可能性は常にある。すると、周囲から「友達がいない」とか「いじめられている」と見做され、屈辱的な思いをしなければならない。

 日本人にとっては、これが怖いのだ。もっとも、「それがどうした」と言えば、別にどうということもないのだが。

 いじめられていた生徒の共通点を思い出すと、「悪い意味で変わっている」という点が挙げられる。「周囲から浮いている」と言い換えてもいい。

 子どもは純粋なので、異質な存在を排除しようとする。だから、仲間外れにされないために、僕たちは幼い頃から、「周囲に合わせる」ことを学ぶ。

 日本人にとっては、同質性から突出すると、「仲間外れ」になるリスクに晒される。学校の教室で誰も挙手して発言しない理由もウェブで匿名を使う理由も、要は「仲間外れ」になるのが怖いからだ。

 モテない同性のグループの中で、その中の1人にだけ恋人ができると、たぶん色々と厄介なことが起きる。おそらく、恋人ができた人はそのことを黙っているし、仮にバレたら「裏切り者」扱いされて、グループから追放されることになるだろう。

 日本人の多数派は自主的な勉強をしないので、「全然勉強してない。勉強なんて役に立たない」と公言した方が、支持と共感を集めることができる。

 「勉強している」と公言することは、モテない同性グループの中で「恋人がいる」と言うのと、とても似ている。悪いことではないし、むしろ望ましいことなのに、嫉妬されて足を引っ張られることになる。

 日本では、学校教師が特定の生徒を褒める際にも、注意が必要だ。良かれと思ってみんなの前で褒めても、「いい気になりやがって」みたいに思われ、褒められた生徒が仲間外れになってしまったりする。

 陰湿としか言いようがないが、身に覚えがある人は結構いると思う。

 日本では、「仲間外れにされない」ために多くの犠牲を払う必要があると思う。

 行きたくもない飲み会に付き合い、お笑いタレントの名前と芸を覚え、「全然、勉強していないよ」と吹聴して、バカな振りをする。そして、バカな振りをしているうちに、いつしか本当にバカになってしまう。

 もっとも、「仲間外れにされない」ために、そこまでする必要があるのか。そもそも、彼らは「仲間」と呼べるのか。

 「否」と僕は思う。そもそも、こんな輩は「仲間」ではない。「烏合の衆」に過ぎない。

 僕は、誰かを「仲間外れ」にするような連中との関係は、切り捨てた方がいいと思う。「烏合の衆」に、足を引っ張られたら、引っ張る手を踏み付けてやれば良いのだ。

 山田宏哉記

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