ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3165)

  「何もしない方がマシ」という失敗

 「何もしない方がマシだった」という類の失敗をしてしまった。その反省を記したい。

 「何もしない方がいい」と判断するのは難しい。それは自分の存在価値を否定することにつながるからだ。僕たちは自分の手で物事を前に進めたいと考えている。

 僕自身、目の前に改善できる点があると、つい手を施してしまう。大抵、これでうまくいく。しかし、必ずしもこれが良い結果をもたらすとは限らない。

 例えば、データベースからデータをエクセル形式でダウンロードしたとする。

 こういう時、よく手作業で罫線を引いたり、行や列を削除・挿入したり、演算式で数値をよりわかりやすくしたりする。実はこれを熱心にやるほど、誤操作でデータが誤るリスクが高まる。しかもこの間も、人件費はかかっている。

 エクセルの表を手作業で「見やすくしよう」と加工している人は、まさかそれが「何もしない方がマシな作業」とは、夢にも思わない。

 しかし往々にして、データベースからダウンロードしたままの生データの方が、人の手が介在しない分、信頼性が高い。

 エクセルでの「レイアウトにこだわって、データを壊す」という失敗に似たケースは色々な所にある。これは完璧主義者が陥りやすい罠だ。

 今回の件で、反省しなければならない点は数多くある。

 失敗の根本的な原因は、「上流工程での問題解決」ができず、「作業リスクの見極め」を誤ったためだ。そもそも、「下流工程で大量の改善を施す」という点そのものが間違っていた。

 コミュニケーションギャップもあった。「誰でも、それくらいの確認はするだろう」と思っていた点を、誰も確認していなかった。皆が「誰かがやるはず」と思うような部分でエラーが起きてしまった。僕には「自分が最後の砦だ」という責任感が欠如していた。

 また、改めて「次工程の担当者に対する変更指示」は、最小限に抑えるべきだと痛感した。これは相手方を振り回すことになるだけでなく、アウトプット本体にもエラーが紛れこむ原因になる。

 思うに、何もしない方がいいことに敢えて手を出すのは、自己顕示欲のなせる業だろう。自分の存在価値を証明するために、つい余計なことをして、痛い目に遭うのだ。

 山田宏哉記

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