ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3170)

 プールにこぼしたコーヒーをどう回収するか

 少し前、就職活動の面接で「プールにコーヒーをこぼしたとします。どうやって回収しますか?」という趣旨の質問をされたという書き込みが、ウェブで話題になっていた。

 かなりの難問と見做されているようなので、僕もこの問の答えを考えた。この問に対する僕の答えは下記の通りだ。

 「まず、こぼしたコーヒーを回収する目的を確認します。プールを清潔に保つことが目的なのか、こぼしたコーヒーを抽出することが目的なのかによって方法は異なります。

 プールの水を清潔に保つことが目的なら、水質検査をした上で、問題があれば水を抜いて入れ替えます。こぼしたコーヒーの量が少なく、水質に問題がなければ対応は不要となります。

 コーヒーを抽出することが目的の場合、本当にこぼしたコーヒーでなければいけないのか、を確認します。市販のコーヒーをそのままこぼしたのであれば、サプライヤーから改めて調達した方がコストを抑えられます。

 どうしてもこぼしたコーヒーそのものを抽出する必要がある場合のみ、プールの水が蒸発するのを待ちます。プールの残りの水が、こぼしたコーヒーの分量と同じになるまで。」

 この問は「何のためにコーヒーを回収するのか」で答えが違ってくる。この点を明らかにしない限り、有効な回答にはならないというのが、僕の考えだ。

 もっとも、実務的には「コーヒーをプールにこぼしたから回収してくれ」と言われたら、「断る」または「相手にしない」というのが正しい対応だろう。

 「どうしても」という場合には、回収する目的と予算、納期等を確認しても良いが、殆ど意味も経済合理性もない仕事だし、結局は「タヌキの皮算用」になると思う。

 もっとも、アルバイト経験が豊富な学生だと「プールにこぼしたコーヒーを回収しろ」と言われたら、プールに飛び込んで水をガブ飲みして、「頑張っている僕を見てください」とかアピールするのだと思う。

 但し、注意が必要なのは、実社会でもマネジャーが無能だと「プールに飛び込んで、水をガブ飲み」みたいな対応をする部下を高く評価する点だ。そういう場合は「運が悪かった」とあきらめるしかない。

 ちなみに、就活で面接官が「プールにコーヒーをこぼした。どうやって回収するか?」と尋ねる意図は「瞬間的に難問に回答する地頭の良さ」と並んで「問題を政治的に解決するタイプか、技術的に解決するタイプか」を見極めようとしているのだと思う。

 更に言うと、面接で「プールにこぼしたコーヒーをどう回収するか?」と質問されたら、ベストな回答は志望する業界/職種/企業文化によって異なる。

 飛込み営業で有名な企業なら「まずプールに飛び込んで云々」が有効そうだし、研究開発職なら「コーヒーの成分とプールの水質を比較して云々」といった技術的な回答をした方が有効だろうと思う。

 そして、このように「文脈に合わせて回答する」という点もまた、ビジネスパーソンにとっては重要な能力なのだ。

 山田宏哉記

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