ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3173)

 苦労はアピールするものだ

 日本では、"苦労"が美徳とされ、評価の対象にもなっている。

 そのため、実際にはトントン拍子で上手くいったことでも、しかめ面をして「実はこんな苦労があったんです」とアピールした方が、評価が高くなるケースが多い。これは嫉妬を避ける日本人の知恵でもある。

 ホリエモンの社会的制裁を受けることになった理由のひとつとして、「苦労のアピール不足」があると僕は思う。「苦労してここまで来ました」みたいな態度を取れば、もっと日本人からの共感も得られたことだろう。

 日本人には「苦労(努力)を認めて欲しい」という人が多いし、実際、苦労をアピールすると、ある程度の評価と共感が得られる。但し、これは悪しきプロセス主義だと思う。

 「若い頃の苦労は買ってでもしろ」などと言われるのは、若い頃に「語るに値する苦労」を蓄積しておいた方が、周囲から嫉妬を受けにくくなり、上手く世渡りができるからだとわかる。

 特にビジネスの分野では、この副作用が顕著になっている。

 例えば、Aさんなら3分で完遂できる案件を、Bさんは何時間もかけて悪戦苦闘し、その挙句、3分で仕上げたBさんの仕事よりも品質が低かったりする("閃き"がモノを言う世界ではよくある)。

 しかし、"苦労"を旨とする日本企業だと「Aさんは手抜きで不真面目だ。Bさんは苦労して取り組んで偉い」みたいに、評価の倒錯が起きやすい。

 「苦労を評価する体質」は、日本企業の生産性の低さの原因になっていると思う。難易度の低い仕事であっても、「こんなに時間をかけて、毎日残業して、苦労してやり遂げた」みたいにアピールした方が評価されたりするので、太刀が悪い。

 こうして日本人は「忙しくて、睡眠時間が◯時間しかない」などと自ら吹聴するようになってしまう。

 「忙しくて、睡眠時間が◯時間しかない」という類の発言は、日本人にとって典型的な「苦労のアピール」だが、実にくだらない。睡眠時間が減れば、その分、仕事のパフォーマンスや品質が落ちる。サービスに対価を払う、顧客の身にもなってみるべきだろう。

 実際、「忙しくて、睡眠時間が◯時間しかない」という類の発言をする人の仕事内容をみると、「体力勝負でルーティンワーク(トランザクション処理)」をしているだけだったりする。餌に反応する犬と同じで、深い思考が必要になるレベルの仕事をしていない。

 以上の点を踏まえた結論はシンプルだ。

 要するに、苦労はするものではない。アピールするものなのだ。

 山田宏哉記

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2012.7.11 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ