ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3175)

 「組織の歯車」からの脱却

 最近、よく考えているテーマのひとつに「"組織の歯車"からの脱却」がある。

 学生の頃は、実社会で働くとは「組織の歯車になること」だと思っていた。気が乗らない仕事を嫌々やる。社会人とは、そういう存在だと思っていた。

 そして、実際に実社会で働き始めて、今年で5年目になる。

 その上で、よく感じる。組織で働いていても、必ずしも「組織の歯車」になる必要はない。成果を出して、組織の事業に貢献することは必須だが、それは「組織の歯車」になることを意味してはいない。

 僕は、本業とは別に、2001年からウェブサイトの運営をしている。こちらは企画・戦略・マーケティングから、コンテンツの作成、ウェブページのデザインや実装、効果検証に至るまで、一気通貫でひとりで手掛けている。

 決して高いレベルには達していないが、確かな手応えがある。だからこそ、既に10年以上続けている。

 経験的に言って、仕事に手応えを感じるために肝になるのは、「一気通貫で手掛ける」ことだと思う。「コピー取って」とか「お客さんに電話して」といった脈略のない指示に従うだけでは、手応えを感じるのはなかなか難しいし、実績にもなりにくい。

 「組織の歯車」とは、おそらくこのような状態を指すのだろう。

 振り返ると、僕は社会人になって数年、自分の力だけで仕事を回すことができなかった。僕が担うのは、あくまで仕事全体の中の一部であり、その担当者は、必ずしも僕である必要もなかった。

 変化が訪れたのは、実績を残してからだ。

 僕は本業でも「ゼロベースの企画」を何件か実現した。不思議なもので、実績を積み、一定の評価を得られるようになると、「組織の歯車」という感覚がなくなってくる。

 組織で働いていても、「組織の歯車になるか、ならないか」は、案外、自分次第だ。「会社勤めは不自由、会社を辞めれば自由」みたいに単純な話でもないと思う。

 もちろん、組織で働く以上、下っ端として"雑用"を一手に担う場合もある。ただ、そういう下積みの仕事は、いずれ「一気通貫で仕事を回す」ために、とても役に立つので、前向きに捉えたい。

 組織で若手が「一気通貫の仕事」を手掛ける場合、「ゼロベースの企画提案を通す」のが最も手っ取り早いと思う。既存の仕事だと、どうしても担当部署や担当者が細かく決まっている傾向があり、必然的に自分の担当も「細分化された領域」に限定されてしまう。

 「一気通貫で仕事を手掛ける」と言っても、もちろん、仕事仲間とのコミュニケーションは極めて重要だ。ちょっとした協力を依頼したり、仕事の成果をレビューして貰うことも大切だろう。

 但し、基幹部分はあくまで自分ひとりでやる。

 だからこそ、「一気通貫で仕事を手掛ける」上で大切なのは、圧倒的な実力だ。実力が中途半端だと、「分担して取り組んだ方が効率的だ」みたいな話になってしまう。

 個人が実務能力を高め、キャリアを築く上では、「一気通貫で仕事を手掛ける」方が良いが、これは組織の思惑とは必ずしも一致しない。組織の論理で言えば、特定の個人の力量に頼った事業運営は望ましくない。このような圧力を打ち返すのが、「圧倒的な実力」なのだ。

 尚、「一気通貫で仕事を手掛ける」上で大切なことに、「仕事仲間への感謝と手柄の分配」がある。「一気通貫で手掛ける仕事」は、仕事そのものが報酬と言える。だから、成果に付随する評価や評判は、思い切って仕事仲間に譲ってしまった方が良い。

 「一気通貫の仕事」をする上で、仕事仲間からの協力を得るには、仲間が「美味しい思い」をした方が良い。実際は独力で成し遂げたことでも、「皆さんのお陰です」と言って仲間に手柄を譲っていれば、「次の仕事」も確保しやすくなる。

 「一気通貫の仕事」を「あれは俺一人でやった」みたいにアピールして、手柄を独占しようとすると、余計な反感を買ってしまう。こうなると「次の仕事」を確保する上でも、支障が生じてしまう。

 また、能力不足で解雇されそうな仲間がいる場合、「一気通貫の仕事」の手柄を譲ることで、彼を救うことができるかもしれない。個人的には、これができるのが「リーダーの器」だと思う。

 よく「手柄を横取りされた」みたいなことで怒っている人がいるが、それは心が狭いと思う。評価や手柄なんて、「譲ってナンボ」のものだろう。

 成果の質と量が少ないからこそ、「手柄を横取りされた」などと騒ぐことになる。掃いて捨てるほどの成果があれば、手柄を譲ることくらい何でもない。

 いずれにせよ、仕事は一気通貫ですることをお勧めしたい。結果的にそれが「組織の歯車」から脱却し、自由を獲得することにつながると思う。

 山田宏哉記

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2012.7.17 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ