ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3176)

 決断から逃げる完璧主義者

 日本では、「完璧主義」と言うと、何やら立派な態度を取っているように思われる。「完璧主義者」を自認する人たちもまた、そのような風潮の上に胡坐をかいている。

 違う。

 実のところ、完璧主義者は決断から逃げているのだ。ミスや失敗で自分の経歴に傷が付くのを恐れ、「完璧でなければダメ」の一点張りをする。完璧主義者には「落とし所」という発想がないので、交渉の余地もない。

 「完璧でなければダメ」の一点張りをするだけなら、小学生でもできる。

 実務家に求められているのは、不完全な情報と環境の中で、成果を最大化することだ。そのためには、一瞬で費用対効果や損益分岐点を見極め、最後は薄氷を渡る決断をしなければならない。

 完成度を高めるためにベストを尽くすことは必須だが、どこかのタイミングで跳ばなければならない。跳ぶのが遅れると、競合に先手を取られて全てを失う(昨今の日本企業の連戦連敗の原因には、「決断の遅れ」があると思う)。

 私見では、完璧主義者は「自分に対して完璧主義」と「他人に対して完璧主義」に大別される。前者は自分の仕事を遅らせて迷惑をかけ、後者は他人の仕事を遅らせて迷惑をかける。より性質が悪いのは後者だ。

 評論家風情の完璧主義者は、「他人に対して完璧主義」に陥りやすい。自らの存在意義をアピールするため、重箱の隅をつついて、他人の仕事にストップをかける。自分の手は動かさず、解決策も提示さず、「問題だ」とか「いかがなものか」と喚き散らす。

 尚、補足すると、「完璧主義」は個人の性格でもあるが、人は閑職に追いやられると、完璧主義者になりやすい。自分の仕事の絶対量が少ない場合、完璧主義者に徹して「時間稼ぎ」をしないと、社内失業者だと見做されてしまう。

 いずれにせよ、「完璧主義」は、知的な負荷が少ない。難しい判断を下す必要がなく、「完璧でなければダメ」と言っていればいいからだ。それでいて「自分は立派な人間だ」と思い込むことができる。

 今のところ、「完璧主義」には、まださほど悪いイメージは定着していない。だからこそ、頭の回転に自信がない人は、「完璧主義者」を目指すのが得策だろう。

 山田宏哉記

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2012.7.18 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ