ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3186)

 評価指標の設定と運用

 ダイエットを成功させるために、欠かすことのできない前提条件は何だろうか。それは、体重という評価指標と、体重計という測定手段ではないだろうか。

 現時点の体重より、未来の体重を減らせれば「ダイエットは成功した」と判断して良いと思う。体重という評価指標がないと、何をもって「ダイエットが成功した」と言うべきか、その判断が難しい。体重という指標はあっても、体重計のような測定手段がない場合も同様だ。

 世の中には「体重という評価指標」や「体重計という測定手段」を持たずにダイエットをしている企業や職場がたくさんある。体重計抜きでダイエットをするとどうなるか。当然、モチベーションは上がらないし、何か問題が起きれば「死ぬ気で頑張る」しかない。

 ダイエットの評価指標として「1日あたりの食事回数」や「運動量」を使っている企業もある。一定の相関関係はあるものの、これらは体重と比べると精度が落ちる。一方、「体脂肪率」のように体重よりも精度の高い指標を使う企業もある。

 もちろん、企業全体では売上や利益といった業績指標が重要になるが、日々の現場レベルの仕事では、もっと手応えのある評価指標が必要になる。店舗であれば来店者数、ウェブであればページビュー、コールセンターであればクレーム率などの指標がそれに相当する。

 組織の評価指標を設定・運用するのはマネジャーの職務だが、担当レベルであっても個人の評価指標を設定・運用するのは、とても大切だ。目標として立てた評価指標そのものが的外れだと、成果主義も成立しない。

 評価指標には「死ぬ気で頑張る」といった精神論は不要だ。顧客訪問回数や来店者数のように計測可能でなければならない。

 また、計測可能な指標であっても「メール受信件数」のようにパフォーマンスに直結しない指標では意味がない。

 私見では、生産性の低い職場では、運営のための評価指標がなかったり、あっても間違っていたり、測定の精度が甘かったりする。体重70kgの人が10kg痩せるのと、自分の体重もわからない人が「とにかく痩せる」のでは、意欲も達成度も違って当然だ。

 評価指標をこまめに測定することのメリットのひとつは「きめ細かな調整ができる」という点だ。こまめに体重計に乗っていれば「もう少し、食べる量を控えよう」とか「もう少し、食べても大丈夫だ」などと調整ができる。体重を測定していない人は、"勘"に頼るしかない。

 ビジネスの現場では「自分の体重をわかっていない」人が結構いる。こういう人は、周りに合わせて、ダイエットをしたり、しなかったりする。自分の体重を把握しておらず「成果が出たのか、出なかったのか」すらわからない。

 所詮彼は「俺は頑張った」と自己満足に浸っているだけだ。

 仕事を進める上で「何を評価指標にするか」を決めるのは最上流工程のひとつであり、ここで的を射ることが、圧倒的成果を出すための絶対条件なのだ。

 山田宏哉記

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