ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3187)

 "コピー機の導入"と抵抗勢力

 手書きで資料を書き写している職場があるとする。

 この職場に必要なことは何か。抜本的に必要なのはコピー機の導入だ。傍から見れば一目瞭然だ。ところが、渦中で働く人にとってはそうではない。多くの人は、仕事を失うことを恐れて、「書き写すスピードの向上」というレベルの業務改善に終始するだろう。

 そもそも、価値の高い仕事をすることより、雇用を確保することを優先するのは、ある意味では当たり前のことだ。

 だから「資料を書き写す」という付加価値の低い仕事であっても、本人にとってはその仕事にしがみつき、コピー機の導入には反対するのが合理的な判断となる。

 この職場で働く人に対して、コピー機の導入を提案する場合には、細心の注意を要する。コピー機を導入した方が良いことは一目瞭然でも、人手を減らす新技術の導入提案をする者は、「裏切り者」と思われても仕方がない。

 但し、話はこれだけでは済まない。

 コピー機の導入への反対には、一定の限度がある。競合がコピー機を使っているのに、手書きで資料を書き写していたら、競合には差をつけられる一方で、組織の業績悪化は避けられない。最悪、経営破綻もありえる。

 いくらコピー機の導入に反対しても、企業を存続させるために、最後は強行突破でコピー機が導入される。

 コピー機の導入に際して、致命的な振る舞いは3点あることがわかる。

1.導入提案に失敗して、裏切り者扱いされ、職場から追い出される

2.最後までコピー機の導入に抵抗するが、結局、強権発動でコピー機が導入され、戦力外通告を受ける。

3.会社がコピー機の導入を拒み続け、結局、倒産。従業員は職を失う。

 この間、僕たちは踊り続ける。

 コピー機に対してどのような態度をとるか。賛成するにせよ、反対するにせよ、タイミングが重要だ。早過ぎても、遅すぎてもいけない。

 踊りが下手な人は、組織から放り出されることになる。

 既にお気付きの通り、"コピー機"というのはあくまで具体例のひとつに過ぎない。

 情報技術は、人手を省き、従来の業務を自動化・省力化する。上記のコピー機の話は、他の新技術や新サービスに関しても、そのまま当てはまる。

 新技術・新サービスを導入する必要に迫られた時、それで従来の仕事を失う人たちがいることを忘れてはいけない。その一方、本当に必要であれば、事業存続のため、最後は強行突破してでも導入しなければならない。

 今後も、次々と新たな"コピー機"が開発され、ビジネスの現場にも導入されるだろう。でも、その時の人間の反応は、意外と昔から変わらない。この点は、覚えておいて損はないと思う。

 山田宏哉記

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2012.8.11 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ