ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3195)

 なぜ、日本企業の労働生産性は低いのか  

 一般に「日本企業は労働生産性が低い」と言われている。

 ある機会によって、その点を実感することになった。僕がひとりでやっていることを、他のある会社では、チームで会議を開いて、議論したりしながら進めているようなのだ。

 単純な話、僕がひとりでやっていることを、チームで仕事を細かく分担して、担当を細かく分けてやるとする。その結果、おそらく僕のアウトプットよりも、スピードが遅くなり、品質は低くなる。その上、人件費は数倍かかる。

 僕がひとりで担当していることを、複数人で分担してやっている話を聞くと「そりゃ、生産性が低くなるよ」と思う。

 ひとりで充分な仕事を、複数人で分けて、しかも残業代を稼ぐために会社に居残ってやるようでは、生産性などあったものではない。

 日本企業には「人が多すぎる」。もう少し正確に言うと、会社に来てもやるべき仕事がない「余剰人員」が多すぎるのだ。

 もっとも近年、多くの日本企業は採用を絞り込んでいる。従って、余剰人員は中高年層に多くなっている。

 日本企業の労働生産性を上げるには「余剰人員の削減」が必須だが、彼らの再雇用先があるかと言うと、疑問符がつく。

 おそらく、介護や小売のような労働集約型の業界だけでは、余剰人員を吸収し切れない。この際、もしかすると「棄民政策」により、余剰人員の中国移住を促進すべきなのかもしれない。

 日本は温情的な国なので、「余剰人員の削減」や「棄民政策」が強権的に発動することは、たぶんこれからもない。

 従って、このまま労働生産性は低いままで停滞し、海外の企業との競争には負け続けるだろう。そして最後は経営破綻し、従業員は平等に職を失う。

 予めわかっていても、打つべき手はあまりない。

 個人のキャリア選択としては、起業するより、大企業就職の方が有利だが、日本全体として考えた時は、優秀な若手は起業した方がいいのだと思う。

 今更になるが、嫉妬によってホリエモンを逮捕した瞬間、日本は岐路を決定的に誤った。

 日本企業の競争力を上げるための比較的穏健な案としては、労基法改訂により「労働条件の下方硬直性」を打破し、成果を出せない余剰人員の降格・減俸処分を容易にする、という案も一応ある。

 とはいえ、首を切れないのであれば、何とかして彼らを"再戦力化"するしかない。

 そもそも、会社に出勤しても、暇ですることがない中高年の「余剰人員」を、再教育によって再び戦力化することはできるなのか。

 ある有名電機メーカーではこの取り組みをしたが、外から見ると、この取り組みは残念ながら、あまりうまく行っていないように見える。

 おそらく「会社に出勤しても、暇ですることがない」という生活を20年、30年も続けると、さすがに第一線で活躍するのは「もはや手遅れ」になる。

 ただ、再教育によって新入社員並のレベルに達するくらいは何とかできるだろうし、給料も新入社員並にすれば、ある程度問題は解決する気もする。

 新入社員のレベルにも達しない場合は、圧倒的成果を出している社員の使い走りやマッサージ係などをさせるのが適当だろう。

 余剰人員と化した中高年層を再教育するにあたって、ネックになるのは「年長者には敬意を払うべき」とする儒教的な価値観だと思う。

 だから、「新入社員と同レベルの仕事、同レベルの給料(場合によってはそれ以下)」にするのを躊躇してしまう。

 しかし本来、ビジネスに年齢は関係ない。しかも、首を切らずに成果主義を運用するなら、余剰人員と化した中高年層の処遇は、大幅に引き下げざるを得ない。

 人間には「最近の若い者は」と苦言を呈する習慣がある。

 しかし、多くの日本企業が抱える真の問題は、特にバブル期に大量採用された中年層が、余剰人員と化していることなのだ。

 以上、あくまで個人的見解にもとづく一般論です。

 山田宏哉記

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