ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3196)

 映画『桐島、部活やめるってよ』覚書  

 映画『桐島、部活やめるってよ』を観賞した。

 不思議な作品で、色々な角度からの解釈ができると思う。個人的には、この映画で最も重要な主題のひとつは「才能を持つ者、持たざる者」だと感じた。

 本作品では「できる奴は何をやってもできる(異性にもモテる)が、ダメな奴は何をやってもダメ(異性にもモテない)」という点が正面から描かれている。実際に台詞としても登場する。

 全編を通して、才能がなかったり、異性にモテない人にとっては、残酷なエピソードが並んでいる。

 特に印象的なのが、背の低いバレー部員の「精一杯やっても、この程度なんだよ」いう趣旨の発言だ。僕も武術や格闘技の訓練をやっている時、全く同じことを感じた。

 才能ある者は難なく手にする一方、才能のない者はどんなに努力しても手にできない。世の中には、そういうものがたくさんある。

 ただ、勝手に想像すると、「才能がある」というのは、人間としては、必ずしもいいことではないと思う。おそらく人は、突出した能力を持ってしまうと、周囲と良い関係を築くのが、とても難しくなる。

 この点は、この映画も例外ではない。

 思うに、才能は人を傲慢にする。下手に才能があると、周囲がバカに見えたり、無能に見えてしまう。そして、図らずもその態度が表に出てしまう。これは特に、才能が社会的に認められていない段階でかかる麻疹(はしか)のようなものだろう。

 「苦楽を共にする」という言葉があるが、周囲から突出した能力を持ってしまうと、仲間と同じ感情を共有するのはおそらく難しい。仲間と切磋琢磨するには、ある程度、実力が伯仲していることが大切だ。

 実社会で働いてわかったが、真っ当に生きるためには、「突出した才能」など必要ない。地道に当たり前のことができれば、それでも生きていける。

 むしろ、下手に才能があると、『山月記』の李徴のように、発狂して人生を終えることにもなりかねない。

 この映画が良いのは、「才能に恵まれた人間が、才能のない人間よりも幸せとは限らない」というメッセージを内包している点だ。

 確かに、愚直に完全燃焼しようとする非才どもは、打ち込む対象を持たない才人より輝いていた。そしてこれは、現実世界にもそのまま当てはまることだと思う。

 山田宏哉記

【関連記事】
基幹人材の条件(2012.9.10)
なぜ、日本企業の労働生産性は低いのか(2012.9.8)
「実務能力の頭打ち」を突破する(2012.9.8)
自転車に乗れるまで(2012.9.4)
撤退戦としての介護(2012.9.1)
つぶしが効く職業、効かない職業(2012.8.22)
人生の岐路、つぶしが効く選択(2012.8.11)
"コピー機の導入"と抵抗勢力 (2012.8.11)
人生の岐路、つぶしが効く選択
"コピー機の導入"と抵抗勢力 (2012.8.11)
評価指標の設定と運用 (2012.8.11)
上を見る人、下を見る人 (2012.8.6)
大衆化するビジネススキル (2012.8.4)
映画『マネーボール』に学ぶ人材戦略 (2012.7.28)
"実務を通した学習"の戦略 (2012.7.27)
なぜ、他人を見下すのは楽しいのか (2012.7.23)
椅子取りゲームの自己責任論 (2012.7.23)
決断から逃げる完璧主義者 (2012.7.18)
「組織の歯車」からの脱却 (2012.7.17)
苦労はアピールするものだ (2012.7.13)
「使い捨て」の人材戦略 (2012.7.12)
「よく喋る人」は他人の話を聞いているのか (2012.7.11)
プールにこぼしたコーヒーをどう回収するか(2012.7.8)
学生がアルバイトをすべきでない理由 (2012.7.7)
「何もしない方がマシ」という失敗 (2012.7.2)
瀧本哲史(著)『武器としての交渉思考』覚書(2012.6.30)
「仲間外れ」の構造(2012.6.26)
反知性主義の国・日本(2012.6.24)
日本人の7割には、中学の教科書レベルの知識もない
(2012.6.23)
読書を実務に活かす暗黙のプロセス (2012.6.23)
教職に逃げる大人たち (2012.6.21)
なぜ、日本企業は社員の自己研鑽を嫌うのか (2012.6.20)
"雑魚キャラ"が果たす役割
(2012.6.19)
虚構・秋元某の女衒術 (2012.6.16)
営業とマーケティング - 訪問販売と集客の戦略 - (2012.6.13)
「工場閉鎖」のシナリオに備えよ (2012.6.12)
日系ブラジル人の街 群馬県大泉町探訪記 (2012.6.11)
優遇される人材、冷遇される人材 (2012.6.9)
"鶏口牛後"は本当か (2012.6.9)
「成長機会」の格差論 (2012.6.8)
自滅する労働貧困層 (2012.6.7)
あの人が嫌われる理由 (2012.6.4)
新参者の心得 -いかに組織に適応するか-
(2012.6.3)
知識と実務のあいだ -学校秀才は"仕事で使えない"か-
(2012.6.2)
「結果が全て」の世界で生きる (2012.5.29)
ノマドが嫌う日本企業(2012.5.27)
なぜ、あの人は長時間残業をするのか(2012.5.26)
最近の若者はバカばかり(2012.5.26)
いかに"集中力"を発揮するか(2012.5.23)
辺境からの企画論(2012.5.20)
高橋俊介(著)『21世紀のキャリア論』覚書(2012.5.20)
競争優位としての"集中力"(2012.5.19)
ビジネスパーソンがヨガをするべき理由(2012.5.14)
岩盤浴の秘密 ―なぜ、女性に人気なのか―(2012.5.13)
ヤンキー文化圏の幸福な人生(2012.5.11)
学習能力向上の戦略(2012.5.1)
性的リソースの分配論(2012.5.1)
"才能の優劣"を考える(2012.4.15)
ビジネスに活かす「サル山の論理」(2012.4.7)
"自動改札機の導入"で消える仕事を考える(2012.3.3)
"人間関係のシャッフル"を考える(2012.2.22)
「異性のパートナー選び」に活かすマーケティング(2012.2.12)
実務家からみた"学校教育の本質"(2012.1.3)
プレイボーイはビジネスの強者か?(2012.1.1)
「カネのため働く」という建前(2011.12.25)
"就活イベント"のビジネスモデル(2011.12.18)



2012.9.11 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ