ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3199)

 チームワークは必要なのか  

 一般に「チームワークが大切だ」と言われると、正面から反対することは難しい。

 但し、僕は「チームワークが大切」という類の話を、あまり信じていない。むしろ、この種の言葉に違和感と不信感を抱いてきた。そういうことを言う人に限って、パフォーマンスが低い傾向にあるからだ。

 もちろん、組織で働く以上、仲間と協調する能力は必須だ。しかし、それは敢えて能書きとして垂れることなのか。

 言いにくいことではあるが、私見では、成果を出せない人ほど、大上段にチームプレーを唱え、自分の成果の低さを覆い隠そうとする。他人の成果にタダ乗りしようとする。

 思うに、こういう振る舞いがまかり通るのは、日本企業では「チームワーク」が金科玉条となっているからだ。

 僕は思う。チームプレーを唱える資格があるのは、自分に割り当てられた役割を果たし、期待された以上の成果を出した人に限られる。暇ですることがないような人が、使っていい言葉ではない。

 私見では、チームワークやチームプレーを考えるにあたっては、サッカーが参考になる。

 サッカーにおいてチームプレーとは何を意味しているか。突き詰めて言えば、「勝利への貢献」こそがチームプレーである。つまり「チームの目標達成に貢献すること」こそがチームプレーであり、「メンバーと仲良くすること」等は、目標達成のための手段に過ぎない。

 サッカーは「チームプレーが重要」であることを否定する人はいないだろうが、個人毎の実力と貢献度は厳しく精査される。そして皆が先発メンバーの座を目指して競い合う。戦力外通告を受けた者は消えていく厳しい世界だ。

 おそらく、「チームプレーをしよう」と思っているサッカー選手はあまりいない、と思う。大事なのは、あくまで「自分が試合に出場して活躍すること」だし、僕は「それでいい」と思っている。

 僕も中学時代、サッカーをしていたが、「チームプレーをしよう」とは考えていなかった。あくまで、自分がレギュラーの座を目指し、試合で活躍するために練習していた。それでも、プレー内容としては、パスを多用し、それほど自分勝手なことはしなかった。

 サッカーでは、誰がシュートを決め、誰がアシストしたかは実績になる。「あのゴールは俺が決めた」などと手柄を横取りすることは許されない。ところが、実社会でチームプレーを唱える人は、「あの仕事は俺がアシストした」などと成果にタダ乗りしようとする。

 会社組織でも、サッカーのチームと同じで、ポジション(ポストや担当業務)を巡って、熾烈なレギュラー争いがある。成果を出せない人は戦力外と見做される。

 サッカーでは、レギュラーになれる人もいれば、なれない人もいる。レギュラーになれなかった人のいくらかは、サッカーを辞めていく。ドライかもしれないが、それは仕方のないことだし、チームメイトがどうこう言える問題でもない。これまたビジネスと共通する話だ。

 また、サッカーの試合で勝つためには、パスの相手は選ばなければならない。個人技が未熟で、トラップミスをするような味方には、ボールは渡せない。ビジネスでも、全く同じことが言える。

 補欠であっても、戦力外通告を受けない限りは、チームにいることならできる。ベンチから試合に出場するレギュラー選手を応援して、チームの勝敗に一喜一憂する。それもひとつの人生のあり方だが、チームの勝利は決して彼の実績にはならない。

 ビジネスにおいて「チームワークの大切さ」云々を説くのも、やはりベンチに座っている補欠だ。

 三浦和良選手の著者)『やめないよ』(新潮新書) にも書いてあったが、年長者が後輩に「何かを伝えたい」と思うようになったら、プロフェッショナルとして、現役を退くべきタイミングなのだろう。

 最前線で戦う人間は、個人であることを前面に出し、あくまで"自分の実績"にこだわる。建前はともかく、本音の部分では「チームワークの大切さ」といった能書きは不要だ。  

 チームの目標達成に貢献すること。そのために、ライバルよりもチーム目標に貢献するべく競い合う。これこそが、チームプレーの核心部分であり、「チームメイトと酒を飲んで仲良く云々」というのは、ごく表面的な話に過ぎないのだ。

 山田宏哉記

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2012.9.15 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ