ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3205))

 なぜ、「普通の人」の能力に期待するのか

 世の中の大半を占める「普通の人」の能力には、あまり期待しない方がいい。低めに見積もった方が、むしろうまくいく。

 典型例はコミュニケーションだ。

 「普通の人」には、読書の習慣がなく、文章の読解力に難がある。また、文章力にも難があり、大抵、過不足のない情報を、簡潔な表現に落とし込むことができない。

 だから、「普通の人」に対して自分の考えを伝える時は、原則、身振り手振り表情を含め、口頭で伝えなければならない。

 「普通の人」が、メールのやり取りで、意思疎通をするのは難しい。メールは「言った、言わない」を防止するためのエビデンスとして使用するのにとどめた方が良い。

 テキストベースでコミュニケーションができるのは、基本的にインテリだけなのだ。たったこれだけのことに気付くまで、僕は数年を要した。

 見識のある新社会人が失敗しがちなのは、「普通の人」の理解力や読解力、予備知識の質と量を高く見積もり過ぎ、テキストベースでコミュニケーションをしようとするからだ。

 「普通の人」は同じことを何度も口頭で説明されないと理解できないし、行動に移せない。

更に言うと、「普通の人」は、政治経済への見識が不充分で、情報リテラシーも欠けている。家で寝転がってバラエティ番組などを見て、「TVでやっていた」ことをそのまま事実と受け止める。選挙は、政策ではなく、政治家の見た目で投票する。

 いちいち、こういうことにイラついても仕方がない。

 そしてもちろん、能力の有無は人間としての立派さとは何の関係もない。

 寝転がって低劣なTV番組を見ながら、「あぅあぅあぅ」と寝言を垂らしているうちに、人生を終える。インテリはそういう「普通の人生」を「くだらない」と切り捨てるのではなく、受け入れて、尊重する必要がある。彼らの感覚こそ、日本の「民意」そのものなのだ。

 本気で相手に伝えたいことがあるなら、対面で伝え、電話でも伝え、更にメールでも送る。これくらいやってようやく、他人を動かすことができる。

 「普通の人」は、読み書きソロバンができれば上出来だし、指摘された改善点も大抵、直せない。エリート人材はそれにイラつく傾向があるが、むしろそれが普通の日本人なのだ

 山田宏哉記

【関連記事】
ソーシャルゲームの廃人は何を求めるのか(2012.9.30)
僕たちは「格差社会」を望んだ(2012.9.4)
新堂冬樹(著)『成り上がり処世術』覚書 (2012.9.23)
文系の7割は営業職に就く (2012.9.21)
「人間好き」のファシズム (2012.9.17)
チームワークは必要か (2012.9.15)
強者はデモに参加するか(2012.9.15)
映画『桐島、部活やめるってよ』覚書(2012.9.11)
基幹人材の条件(2012.9.10)
なぜ、日本企業の労働生産性は低いのか(2012.9.8)
「実務能力の頭打ち」を突破する(2012.9.8)
自転車に乗れるまで(2012.9.4)
撤退戦としての介護(2012.9.1)
つぶしが効く職業、効かない職業(2012.8.22)
人生の岐路、つぶしが効く選択(2012.8.11)
"コピー機の導入"と抵抗勢力 (2012.8.11)
人生の岐路、つぶしが効く選択
"コピー機の導入"と抵抗勢力 (2012.8.11)
評価指標の設定と運用 (2012.8.11)
上を見る人、下を見る人 (2012.8.6)
大衆化するビジネススキル (2012.8.4)
映画『マネーボール』に学ぶ人材戦略 (2012.7.28)
"実務を通した学習"の戦略 (2012.7.27)
なぜ、他人を見下すのは楽しいのか (2012.7.23)
椅子取りゲームの自己責任論 (2012.7.23)
決断から逃げる完璧主義者 (2012.7.18)
「組織の歯車」からの脱却 (2012.7.17)
苦労はアピールするものだ (2012.7.13)
「使い捨て」の人材戦略 (2012.7.12)
「よく喋る人」は他人の話を聞いているのか (2012.7.11)
プールにこぼしたコーヒーをどう回収するか(2012.7.8)
学生がアルバイトをすべきでない理由 (2012.7.7)
「何もしない方がマシ」という失敗 (2012.7.2)
瀧本哲史(著)『武器としての交渉思考』覚書(2012.6.30)
「仲間外れ」の構造(2012.6.26)
反知性主義の国・日本(2012.6.24)
日本人の7割には、中学の教科書レベルの知識もない
(2012.6.23)
読書を実務に活かす暗黙のプロセス (2012.6.23)
教職に逃げる大人たち (2012.6.21)
なぜ、日本企業は社員の自己研鑽を嫌うのか (2012.6.20)
"雑魚キャラ"が果たす役割
(2012.6.19)
虚構・秋元某の女衒術 (2012.6.16)
営業とマーケティング - 訪問販売と集客の戦略 - (2012.6.13)
「工場閉鎖」のシナリオに備えよ (2012.6.12)
日系ブラジル人の街 群馬県大泉町探訪記 (2012.6.11)
優遇される人材、冷遇される人材 (2012.6.9)
"鶏口牛後"は本当か (2012.6.9)
「成長機会」の格差論 (2012.6.8)
自滅する労働貧困層 (2012.6.7)
あの人が嫌われる理由 (2012.6.4)
新参者の心得 -いかに組織に適応するか-
(2012.6.3)
知識と実務のあいだ -学校秀才は"仕事で使えない"か-
(2012.6.2)
「結果が全て」の世界で生きる (2012.5.29)
ノマドが嫌う日本企業(2012.5.27)
なぜ、あの人は長時間残業をするのか(2012.5.26)
最近の若者はバカばかり(2012.5.26)
いかに"集中力"を発揮するか(2012.5.23)
辺境からの企画論(2012.5.20)
高橋俊介(著)『21世紀のキャリア論』覚書(2012.5.20)
競争優位としての"集中力"(2012.5.19)
ビジネスパーソンがヨガをするべき理由(2012.5.14)
岩盤浴の秘密 ―なぜ、女性に人気なのか―(2012.5.13)
ヤンキー文化圏の幸福な人生(2012.5.11)
学習能力向上の戦略(2012.5.1)
性的リソースの分配論(2012.5.1)
"才能の優劣"を考える(2012.4.15)
ビジネスに活かす「サル山の論理」(2012.4.7)
"自動改札機の導入"で消える仕事を考える(2012.3.3)
"人間関係のシャッフル"を考える(2012.2.22)
「異性のパートナー選び」に活かすマーケティング(2012.2.12)
実務家からみた"学校教育の本質"(2012.1.3)
プレイボーイはビジネスの強者か?(2012.1.1)
「カネのため働く」という建前(2011.12.25)
"就活イベント"のビジネスモデル(2011.12.18)



2012.10.4 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ