ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3206)

 なぜ、納得いく評価を得られないのか

 ビジネスパーソンにとって、自分に対する評価は大きな関心事である場合が多い。その一方、納得いく評価が得られないケースは、決して少なくないと思う。時にそれは離職の理由にもなりえる。

 評価に納得できない原因は、大きく3つに分けられると思う。

1.自分自身を過大評価している。
2.評価者が過小評価している。
3.割り当てられる仕事のレベルそのものが低い。

 項番1について。まず、大前提として押えておくべき事柄がある。それは、人間は自分自身を過大評価し、他人を過小評価する傾向があることだ。特に人生経験が浅い若者ほど、この傾向が顕著になる。

 自分自身を過大評価していては、いつまで経っても、他者からの評価に納得することはできないだろう。

 自分自身に対する過大評価を改めるために必要なのは「等身大の自分を直視する」ことだと思う。

 自己評価が高い割に、他人からの評価が低い若者は、「俺の実力はこんなものじゃない」とか「俺だって、やればできる」と思っている場合が多い。「こんなに頑張っているのに」と被害妄想を持つ場合もある。

 いずれにせよ、「等身大の自分」を直視することが必要だ。

 もっとも、自分自身に対して過大な期待をすることは、悪いことではない。強烈な向上心があると、その分、物事の習熟や上達が速くなる。

 但し、あるべき自分に到達するためにも、現在の自分を正確に査定しなければならない。

 項番2について。評価する側に問題があることは、それほど多くはないはずだ(あまりにこれが多い企業は、経営破綻するため)。それでも、確かにこのケースはある。

 念のために断っておくと、僕は「好き嫌いによる評価」をさほど問題視しない。言うまでもないが、人物評価において「好き、嫌い」は最重要項目だ。

 客観評価と言っても大抵、好きな人の場合、長所や実績に重点を置いて評価するし、嫌いな人の場合、短所や失敗に重点を置いて評価する。誰しも、日常的にやっていることだろう。

 従って、上司に嫌われているビジネスパーソンは、当然「(長所や実績は無視され)短所や失敗に重点を置いた評価」を受けることになりがちだ。誰しも短所や失敗はあるものだし、そこだけをクローズアップされれば「無能な人材」という評価になる。

 厄介なのは、マネジャーより部下の方が優秀な場合だ。こういう場合、問題のあるマネジャーは、部下の粗探しをする傾向がある。当然、部下は不当に低い評価を受けることになる。

 従って、Aクラス人材(優秀層)は、組織の中での評価が乱高下することがある。これは「上司より部下の方が優秀」であるが故に、起きる現象と考えられる。

 処世的には、人間関係の機微を踏まえ、嫉妬されないよう振舞うのが得策だ。但し、優秀層はえてして社内政治に疎く、上司にゴマをするような「せこい手」を嫌うことが多い。

 項番3について。「割り当てられる仕事のレベルそのものが低い」というのは、意外と見逃しがちなポイントだ。

 便宜的に、人材価値/仕事のレベル/職務達成度/貢献度/人材評価を、A(優良),B(標準),C(不良)の3段階に分けて考えてみたい。

 一般に企業は、Aクラス人材にはAクラスとBクラスの仕事を割り当てる。Bクラスの人材にはBクラス、Cクラスの仕事を割り当てる。Cクラスの人材にはCクラスの仕事を割り当てるか、あるいは社内失業状態にして「新しい人生」をスタートすることを勧める。

 大雑把に言うと、Aクラスの仕事とは企画・戦略立案・マーケティングなどの上流工程や基幹事業のマネジメントのようなコア業務が相当する。Bクラスの仕事とは、要はルーティンワーク(定型業務)だ。Cクラスの仕事とは、例示はしないが、要は「雑用」だ。

 Cクラス人材が、Cクラスの仕事をして、指示された点を完遂したら、どう評価すべきか。厳密に評価すると、成果はC(不良)。但し、次は、Bクラスの仕事を与える価値はある。そして次回、Bクラスの仕事ができれば、Bクラス人材に格上げとなる。

 Bクラスの仕事(定型業務)を手掛けるBクラス人材は、組織のボリューム層であり、ここが欠けると組織は立ちいかない。では、Bクラス人材が、Bクラスの仕事を手掛けた場合、どう評価すべきか。達成できていればB評価、達成できなければC評価だろう。

 おそらく「一生懸命、仕事をしているのに評価に納得できない」というのは、Bクラスの人材がBクラスの仕事をしている場合に起きやすい。Bクラスの仕事を、指示された通りに完遂しても、組織への貢献度はB(標準)評価でしかない(たとえ徹夜しようと)。

 補足すると、「仕事の報酬は仕事」という格言は、「Bクラスの仕事の報酬は、Aクラスの仕事」という意味なのだ。Aクラスの仕事をするチャンスが得られることで、同時にBクラス人材からAクラス人材に格上げになるチャンスも得られる。

 Aクラス人材がAクラスの仕事を手掛けた場合、どう評価するか。達成度に応じて、A(優良)評価、B(標準)評価、C(不良)評価とするのが適当だろう。C評価の場合は、Bクラス人材への格下げもあり得る。

 もっとも、ここまで厳密に人材、仕事のレベル、成果を評価する日本企業は、現実にはあまりないと思う。現実には、徹夜でCクラスの仕事をするようなCクラス人材(残業代目当て)に「彼は頑張っている」などという理由でA評価をつけるケースも多いだろう。

 実のところ、僕も長らく、自分に対する評価に納得できなかった。

 評価が低かった頃は、評価のことばかりが気になったが、いざ高い評価を受けると、僕の主たる関心から外れてしまった(お金とよく似ている)。

 体感としては、評価は衛生要因であり、動機付け要因ではないと思う。不当に低いとさすがにストレスが溜まるが、一定以上の評価であれば「後はどうでもいい」と感じてしまう。

 少なくとも今の僕にとっては、他人からの評価より、自己評価の方が重要だ。

 このように考えると、評価とはあくまで結果であり、重要なのはむしろ「Aクラスの人材になること」「Aクラスの仕事を手掛けること」「仕事の達成度を上げること」だとわかる。

 Aクラスの人材として、Aクラスの仕事を、高い達成度で完遂すれば、自ずと高い評価を得られる。一方、一生懸命、Bクラス、Cクラスの仕事をしても、標準より上の評価は得られない。

 愚痴をこぼしたり、ウジウジと悩んでも仕方がない。ビジネス上の評価なんて、単にそれだけのことでしかないのだ。

 山田宏哉記

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2012.10.6 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ