ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3207)

 他人に差を付ける「運動」の戦略

 昨今の雇用情勢を反映してか、学生は就職活動のために、ビジネスパーソンはキャリアアップのために、スキルアップに励んでいる。

 果たして、その努力は報われるだろうか。ビジネス書を読み、自己啓発セミナーに通っても、おそらく劇的な実力向上は望めないと思う。なぜなら、実務能力は身体的なものであり、頭で理解するだけでは殆ど役に立たないからだ。

 あまり言われないが、「頭で理解できること」は、独創的な知見でもない限り、さほど差別化の要因にはならない。

 また、明文化され、誰にでも理解できるようになった情報は、簡単に複製される。従って「頭で理解できること」で他人に対して永続的な優位性を確保するのは難しい。

 そこで僕が注目しているのが、実は「運動」という法だ。

 最近、僕は定期的に運動をするように心がけている。運動と言うと、「体力向上」や「健康維持」ばかりがメリットとして挙げられるが、実務能力を底上げするためにも、極めて有効な手段だと考えている。

 日経産業新聞の連載「インタビュー我が社の人材戦略」に掲載された博報堂の事例では、「農作業の研修が極めて高い効果を発揮した」と紹介されている。その背景には「もっと身体を使わなければダメだ」という経営トップの判断があったようだ。

 また、漫画の事例になるが、板垣恵介氏の『バキ』では、主人公のバキが恋人と「相手が必要な種目」の運動をして、実力を飛躍的に向上させることに成功した(私見では、こういう事例は現実世界にも溢れている)。

 更に、大島清(著)『なぜ、脳はセックスで活性化するのか?』によると「ヒフ感覚をはじめとする五感によって、快さが得られれば得られるほど、大脳の情動をつかさどる部分が発達します」と指摘されており、定期的な運動は、脳の発達にも良い影響を与えると推察できる。

 では、具体的な運動種目はどう選べば良いのか。

 大枠では、本業の職務内容と改善したい要素に応じて、選択すれば良いと思う。あるいは、体力向上、脳機能の改善、コミュニケーション能力向上のうち、どの要素を強化するのかによって、決めれば良い。

 運動には、大きく分けて1人で完結する種目と相手が必要な種目がある。

 体力向上と脳機能の改善は「1人で完結する種目」(ヨガや水泳、ランニングなど)でも可能だが、運動の目的をコミュニケーション能力の向上とするなら「相手が必要な種目」を選んだ方が良い。

 更に、相手が必要な種目も、大きく分けると「相手の性別を問わない種目」(球技やブラジリアン柔術など)と「相手の性別を問う種目」(具体例は省略)がある。

 運動の成果を活用する具体例としては、就職活動があげられる。

 よく知られているように、就職活動では「コミュニケーション能力」が求められることが多い。面接の場面の考慮すると、学生が内定を得るためには「相手の性別を問う種目」の運動をして、脳機能とコミュニケーション能力を強化するのが合理的な訓練だ。

 文系出身者であれば、文系卒の7割が営業職に就くことを踏まえ、外回りの営業ができるだけの基礎体力も必要だ。これについては「1人で完結する種目」の運動で強化しても良い。

 私見では、自己啓発セミナーに通ったり、性格改善の自己催眠などをする人より、異性と運動をして人生を謳歌(?)する人の方が、圧倒的にコミュニケーション能力が改善され、パフォーマンスが高くなる。当然、就職活動でも良い結果を得られる確率が高くなる。

 ホワイトカラーとしてオフィスで働いていると、脳の中で使う部位が限られてしまいがちだ。

 経験的に言うと、オフの時間は、本業中に使わなかった部位を使うようにすると、アンバランスが多少は是正され、本業のパフォーマンスも良い影響を与える。

 日常生活の課題として「運動不足」を挙げる人は多いが、その殆どが「健康上の理由」に留まっている。

 幸いなことに、「運動」をビジネスパーソンとしての競争優位を築くための戦略として活用しているケースは、まだほとんどないのだ。

 山田宏哉記

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2012.10.8 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ