ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3212)

 労働貧困層と生活保護

 不思議なことに、「明日は我が身」のはずの人ほど、生活保護を叩く傾向がある。

 「自分はこんなに苦労しているのに、報われていない」という不遇感の裏返しだろう。

 冷静に考えると、働いても低い賃金しか得られない人が、生活保護の受給者を批判する資格はない。

 例えば、労働貧困層は「俺たちの払った税金が、生活保護の受給者に払われている」ことを問題視する。

 しかし、年収200-300万円程度の人は、税金の負担額より公共サービスからの受益分の方が大きい。生活保護の受給者を養っているのは、労働貧困層の税金というより、高額所得者が支払う税金である。

 仮に、生活保護の受給者を「社会の寄生虫」と呼ぶなら、程度の差はあれ、労働貧困層も税金の負担額以上の公共サービスを受けている以上、「社会の寄生虫」となる。

 労働貧困層が「働かざる者食うべからず」などと言うのは、働いているのに生活水準が生活保護受給者並みだからだろう。

 そもそも、働いても低い賃金しか得られないのは、あくまで本人の責任であって、生活保護受給者の生活水準に八つ当たりするのは筋が違っている。

 ところで、「真犯人を逃してでも、冤罪を防ぐ」という考え方を、生活保護に当てはめると「不正受給を見逃してでも、受給する権利がある人が排除されるのを防ぐ」となるはずだ。

 しかし、労働貧困層は「冤罪(死人)が出てもいいから、真犯人(不正受給)を見逃すな」と主張しているように見える。

 では、生活保護に関して「不正受給があること」と「受給を受けられず、死人が出ること」のどちらを重く受け止めるか。当然、後者であるべきだろう。

 このように考えると「死人が出ようと、不正受給を見逃すな」と考えている労働貧困層は、まさに「人間のクズ」ではないだろうか。

 更に言うなら、生活保護の不正受給をバッシングしている人は、障害者年金の不正受給もバッシングするべきだろう。

 なぜ、生活保護の不正受給を叩くのに、障害者年金の不正受給を見逃すのか。貧乏人を叩くのは気持ちよくても、障害者を叩くのはさすがに良心が痛むのか。

 いずれにせよ、生活保護の受給者を叩いている人は、「この先何が起きようと、どのような事情があろうと、私は生活保護を受給しません」と誓約してから、生活保護を叩いて欲しい。

 少なくとも、僕はセーフティネットに関しては、「明日は我が身」だと思っている。勇猛果敢な労働貧困層とは異なり、僕には自らセーフティネットを切り崩すようなマネはできない。

 山田宏哉記

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2012.10.18 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ