ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3215)

 マルチタスクは必要なのか

 仕事を効率的に進めるための切り札として、「マルチタスク」が挙げられることがある。

 僕はかつて、周囲から「マルチタスクができない」と思われていた。今はなぜか、「マルチタスクができる」と思われているようだ。

 但し、仮に「電話をしながら、全く別のメールの返信をする」というような行動をマルチタスクと呼ぶなら、僕はマルチタスクをしていない。

 僕は社会人になった当初から、一点集中型で仕事をしていて、このスタイルはあまり変わっていない。要するにマルチタスクではなく、シングルタスクで物事に対応する。単に周囲からの評価が変わっただけだった。

 確かに、マルチタスク型の人は、処世的には上手く振舞っているように見える。しかしいつしか、一点集中型の僕の方が価値の高い成果を出せるようになった。

 僕の場合、バリューと優先度が高い順に、一点集中でシーケンシャル(連続的)に処理していく。「バリューと優先度の見極め」が肝になるが、これだけで「圧倒的成果」を出せている。

 改めて気付いたのは、マルチタスク型を自認している人は、単なる「注意散漫」のことが多いことだ。

 だから「電話をしながら、電話の内容と関係ないメールのチェックをする」といった表面的な行動に終始する。結果的に、電話対応も、メールチェックもいい加減になってしまう。

 職務としてマルチタスクが必要になるのは、秘書業務やアシスタントのような「受け身の仕事」だろう。重要人物の補佐や身の回りの世話をするような職務は、脊髄反射的に気の利いた行動を連発しなければならない。

 確かに、こういう仕事はマルチタスクが必要だと思う。

 誤解を恐れずに言えば、マルチタスクとは単純作業に毛が生えた程度のスキルであり、これが要求される職務の報酬も、単純労働に毛が生えた程度の水準に留まることになる。

 結局のところ、仕事のスピードと成果の質がものを言う。単純な話、仕事のスピードと質を上げれば、周囲からはマルチタスクに見える。

 なお、マルチタスクは不要でも、定型業務はなるべく効率的に処理した方が良いと僕も思う。そのための細かい技術論は、既に数多く唱えられている。

 例えば、単語帳を活用すれば、文字入力の精度とスピードを劇的に改善することができる。

 住所や電話番号あるいは会社名や商品名などは、単語帳に登録して、一発変換できる環境を構築した方が作業時間を削減できる。別の資料を見ながら手入力などをするのは、時間がかかる上に、ミスのもとだ。

 あるいは、休憩前にデフラグやディスククリーンアップをしたり、プリントアウトをしている最中に机上の整理整頓をするなど、工夫の余地はいくらでもある。

 こうして節約した時間を付加価値の高い仕事に投入すれば、より大きな成果を期待することができる。

 結論として言えるのは、仕事をする上で「マルチタスクは切り札でも何でもない」。

 問われているのは、あくまで仕事のスピードと成果の質を上げることであり、そのためにはむしろ、一点集中型の方が都合がいいのだ。

 山田宏哉記

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