ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3232)

 実務に活かす株式投資

 僕は数年前から、社会人として本業をする傍ら、それとは別に株式投資をしている。運用成績は「それなり」としておこう。

 当初は僕の中で、株式投資は本業と全く関係がなかった。しかし、今では投資と実務のあいだには密接な関係があり、強力な相乗効果を生み出すことに気付いた。

 具体的に言えば、「株式投資のために得た知識や情報は、本業でも活用できる」のであり、「本業のために得た知識や情報は、株式投資でも活用できる」のだ。

 例えば、「日経新聞」や各種のビジネス雑誌を読むとする。

 実務家としての標準的なビジネス情報の読み方は「自分のいる業界や関連企業の動向を抑えたり、自分の職種に関連した情報を収集する」といった具合だと思う。

 多くの人は、これを「仕事のため」に限定して読む。なぜか、株式投資にも転用できる情報だと気付かない。

 一般的には、株式投資では割安の株を狙う。

 そして、何をもって割安と判断するかと言うと、財務諸表を見て判断する。ただ私見では、財務諸表を見て投資先を決めていては、実務へのフィードバックはあまり期待できない(財務系の職種の人を除く)。

 僕の場合、ビジネスモデルと人材戦略を見て、投資先を決めている。財務諸表は参考程度で、営業利益の金額と売上高営業利益率を見る程度だ。ビジネスモデルと人材戦略を基準に投資先を決めているのは、僕の本業との相乗効果が大きいからだ。

 私見では、企業の中長期的な成長を左右するのは、ビジネスモデルと人材戦略の優劣だ。そして、ビジネスモデルと人材戦略の評価は、人間心理が大きく影響するので、定量的に行うのが難しい。

 金融機関のプロより、案外、実業企業のビジネスパーソンの方がよくわかっている。

 投資案件として、ビジネスモデルと人材戦略が優れた会社を探しだせば、本業の実務ではこれを「他社事例」として使うこともできる。

 要は、ビジネスモデルや自分の職種を基準に投資先を決めると、実務との相乗効果が生まれやすい。例えば、広報担当者なら、広報がうまい企業探し出して投資する。そのための情報収集は、本業でも役に立つので、まさに一石二鳥だ。

 そもそも、金融理論の話になると、どうせ金融のプロには勝てない。だから僕は、特に金融理論の勉強もしないし、割安株も狙わない。この部分は、最初から捨てている。

 ビジネスパーソンが、チャートを見ながら「割安株を買って、割高になったら売る」みたいなことを目論むと、火傷する可能性が高い。割安株を狙うことにかけては、投資のプロに勝てるわけがない。

 しかし、ビジネスモデルや人材戦略の話であれば、金融業界にいる人より、僕の方がむしろよくわかっていると思う。だから、ビジネスモデルと人材戦略が優れている会社を探し出し、中長期的に投資する。

 更に言えば、意思決定のスキルを伸ばす最良の方法は、損益に責任を持ち、決断することだ。

 株式投資をする際は、否応無しにこの立場に置かれる。若い頃から、責任ある立場に身を置きたければ、実は株式投資をするのが、最も身近な方法だ。

 「決断力を高めるセミナー」などに通うより、実際に身銭を切って、自分の判断と責任で株式投資をした方が、遥かに決断力を鍛えられる。そして、うまくいけば大金を稼ぐことができる。

 仮に株式投資で損をしても、決断力養成の授業料だと思えば、案外、安いものだ。

 山田宏哉記

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2012.12.15 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ