ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3234)

 踏切事故で生と死を分かつもの

 クローズアップ現代「踏切事故 なぜ繰り返されるのか」(2012年12月12日放送)を視聴した。番組では、いくつか象徴的な踏切事故の事例が取り上げられていた。

 事故事例1。高齢男性が自転車で踏切を渡っている最中、近所のお店で買った品物を落とす。品物を拾うのに手間取り、助けに入った女性と共に轢かれて死亡。

 事故事例2。電動車椅子で踏切を渡っている最中、遮断機が降り、踏切内に閉じ込められる。電動車椅子では遮断機を強行突破できず、電車に接触して死亡。

 事故事例3。保安員が操作を誤り、遮断機を下ろすべき時に、遮断機を下ろさず。電車に気付かない通行人が踏切に立ち入り、電車に轢かれて死亡。

 そもそもの話になるが、元来、踏切は危険な場所だ。渡るタイミングを誤ったり、渡る途中で立ち往生すれば、電車に轢かれて死ぬ。近くに立体交差があるなら、極力、踏切を利用するのは避けたい。

 映画『時をかける少女』でも下り坂で自転車のブレーキが効かずに、遮断機を乗り越え、電車にダイヴしてしまうシーンがある。

 それを踏まえた上で、上記の事故事例の教訓を考えてみたい。

 まず、踏切で落としたモノを拾うのは「安全確保してから」だ。

 踏切内で、近所のスーパーで買った食品袋を落とし、辺りに品物が散乱したら、一旦、品物は諦めた方が良い。「食品がもったいない」と言って拾っているうちに電車に轢かれたら、あまりにバカバカしい。

 事例1では、気の毒なことに、助けに入った女性も巻き添えで亡くなっている。そもそも、踏切内で立ち往生している人がいたら、どうすれば良いのか。

 覚えておくべきは「見捨てるか、助かるか」の二択ではないことだ。まずは、踏切脇にある非常ボタンを押すべきだ。これで、電車には緊急停止のブレーキがかかる。

 番組によると、事例1では非常停止ボタンが押されていなかった。非常停止ボタンが押されていれば、2人とも助かったかもしれない。こういう場面では、文字通り、知識が生死を分ける。

 非常ボタンを押した後の行動は、各人の人生観による。

 ひとつ言えるのは、踏切内で立往生した人の助けに入るのは、自分の生命を危険に晒すということだ。首尾よく助けられたらそれに越したことはないが、仮に見殺しにしたとしても、誰もあなたを責めたりはしない。

 更に難しいのは、踏切内で立往生した人の助けに入ったが、うまく安全な位置に退避させることができないケースだ。

 電車はすぐそこまで迫ってきている。こういう時は、残念ながら立往生した人を見捨てて、自分だけでも助かった方が良い。少なくとも、あなたの家族や友人はそれを望んでいる。

 「踏切内で立往生をした人がいたら、助けに入る」というタイプの人は、酷なようだが、普段から「見捨てるライン」を考えて置いた方が良いと思う。「電車がこの距離まで迫って来ても助けられなかったら、自分だけでも助かる」というラインだ。

 私見では、最悪でも電車通過の3秒前には、立往生した人を見捨てて、線路から離脱したい。

 事例2の教訓は、「遮断機を強行突破できない電動車椅子では、踏切を渡らない」ことだろう。車椅子で踏切を渡ろうとして、立往生して電車に轢かれる事故は、マスメディアで幾度も報道されている。

 「車椅子で踏切を渡るのは危険」というのは、ある程度、常識として共有されるべき事柄だと僕は思う。

 事例3の教訓は、信号トラブルやヒューマンエラーが起きるリスクを想定しておくことだ。遮断機が開いたままであっても、電車が来ていないか、必ず目視で確認すべきだ。

 私見では、電車関連の事故に巻き込まれて落命するリスクは結構ある。しかも、その瞬間は唐突にやってくる。

 踏切内で落とした荷物を拾っていた人や「遮断機が開いているから」と自分の眼で確認せずに線路に立ち入った人は、その直後、電車に轢かれて人生を終えるとは、想像もしていなかっただろう。

 人生には許される失敗と許されない失敗がある。踏切事故は当然、一度の失敗も許されない。だから極力、安全サイドに倒した対策をとっていた方が良いと僕は思う。

 山田宏哉記

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2012.12.15 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ