ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3236)

 ペニーオークション詐欺の教訓  

 ペニーオークションと呼ばれるウェブサービスで、大規模な詐欺が行われていたことが発覚した。

 ごく簡単に言うと、ペニーオークションは「格安で高額の商品が手に入る(かもしれない)」という宣伝文句でお客を集め、入札の手数料を徴収するビジネスモデルだ。

 もちろん、実際には落札できない(少なくとも、格安では)。お客が商品を格安で落札できないよう、プログラムで操作されている。

 更に、このペニーオークション詐欺は、著名芸能人が加担していたことでも話題になった。

 私見では、この詐欺の教訓は2つある。「ウェブのサービスは、運営側の不正を見破るのが難しい」という点と「芸能人は、虚偽の発言に慣れっこ」という点だ。

 まず、出会い系サイトやソーシャルゲーム、ペニーオークションなどは、サクラを動員したり、プログラムを運営側に有利に設定すれば、まさに「やりたい放題」になる。ハッキリ言うと、ユーザー側として、この種のサービスを利用するのは愚かだ。

 例えば、「図書券1万円をネットオークションで売る」というビジネスを考えてみよう。

 最低購入価格は、\1から。但し、入札の度に、手数料\500がかかる。うまく行けば、\501で図書券1万円分が落札できる。

 ユーザー側から見ると、これはおいしい話だ。図書券は金券ショップで換金できるので、安く買い叩けば、買値と金券ショップでの売値の差分を稼ぐことができる。

 但し、仮に図書券一万円分が\501で落札されてしまったら、運営側としては大赤字だ。
そこでシステムのプログラムを操作し、例えば「ユーザーの入札価格+\100」で自動的に入札が行われるように設定する。そうすると、何が起きるか。

 仮に図書券一万円分の入札価格が、\1,\101,\300,\400,\1,000…\8,000,\8,100,\8,500と推移し、\8,600で運営側の自動プログラムが落札したとする。

 この時、ユーザー側の入札回数が10回なら、入札の手数料収入として\5,000が手に入る。しかも、運営側は全く懐が痛まない。詐欺で摘発さえされなければ、圧倒的に高収益のビジネスモデルだ。

 ペニーオークションの構造は、基本的にこういうことだ。冷静に考えれば、詐欺同然だとわかるが、人間は欲に目がくらむと、合理的な判断能力を失ってしまう。

 もっとも、ビジネスパーソンであれば、「手数料こそ、利益の源泉」だとよくわかっているはずだ。入札手数料ばかりかかって、結局は落札できないペニーオークションは、手数料ビジネスを極端に突き詰めた形態だろう。

 もうひとつ、見逃せないのが、著名芸能人の虚偽発言だ。

 実際には落札していないのに、業者からお金をもらって「ペニーオークションで落札した」などとブログで書き散らした責任は重い。

 ただ、TBSラジオのDigでペニーオークション詐欺の特集をやっていたが、どうやら芸能人は虚偽の発言に「慣れっこ」のようだ。

 使ったことのない商品を「凄い良かった」と言い、行ったことのないお店のメニューを「美味しかった」という。殊更、嘘をついている意識はなく、台本通りの発言をしているだけのようだ。

 芸能人ブログにしても、「本人が書いているか」と言えば、大抵、答えはノーだろう。むしろ、広報やスケジュール管理をしているマネジャーが、本人になりすまして書いた方がむしろ都合が良いと思う。

 芸能人ブログを有難がって読んでいるような人は、基本的に情報弱者だろう。その挙句、ペニーオークションのような詐欺に引っ掛かる。

 少し考えれば、入札料のかかる電子オークションが不正の温床になることくらい、誰にでもわかるはずだ。しかし、欲に目がくらんだ。芸能人ブログの内容を真に受けるのも、情報リテラシーが欠如している証拠だ。

 まっとうな大人は、ペニーオークションなど、見向きもしない。業者が悪いのは言うまでもないが、騙された人も自業自得ではないだろうか。

 山田宏哉記

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2012.12.22 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ