ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3241)

 なぜ、 政治の話をしない方がいいのか 

 昔から処世術として、「政治と宗教の話は避けよ」と言われます。これは理に適っていると僕は思います。

 政治の話をすると、人々はとたんに諍いを起こしやすくなります。なぜか。それは政治の本質が「利益配分」に関わることだからです。

 端的に言うと、人々は自分の利益を代弁する政党、政治家を支持します。そして、利害が対立する政策を主張する政党、政治家を貶します。

 政策の論点は、実は「正しいか、間違ってるか」ではありません。

 政治の決断とは、究極的には「誰を優遇するのか」であり、有権者が政策を確認する際のポイントは「自分の利益に合うか、合わないか」でしかありません。

 高齢者にとっては、高齢者に手厚い政策を掲げる政党が、「良い政党」でしょう。但し、資源が有限である以上、高齢者への利益配分を多くすれば、若者の取り分は減ります。若者にとっては、この政党は「悪い政党」になるでしょう。

 「変な政党、変な政治家」という言葉を聞いて、具体的にどの政党、どの政治家を思い浮かべるか。これは人それぞれでしょう。大切なのは「自分の感覚は必ずしも一般的ではない」という自覚です。

 いずれにせよ、自分の立ち位置を無視して、政策の是非の論じることはできません。

 政治の本質が利益配分である以上、政治の論理は人々を「敵」と「味方」に分けます。従って、特定の政党、政治家の支持を表明することは、人々を敵と味方に分けることにつながります。

 だからこそ、政治以外の分野で商売をしている人にとっては、これは大きなリスクになります。

 私見では、村上春樹が息の長い作家であり続けている理由の一つに、少なくとも公共の場においては、党派性の強い発言を避けている点があります。

 村上春樹が「僕は自民党を支持します」と発言をしたら、少なからぬ人はガッカリするでしょう。この場合、「自民党だからダメ」なのではなく、おそらくどの政党を支持してもいけないのです。

 あるいは、大手コンビニエンスストアが店の前で「当社は断固として民主党を支持します」などと立て看板を出していたら、どうでしょうか。

 民主党支持者にとってはいいかもしれませんが、同時に「敵」も作ってしまうことは間違いありません。多くの顧客は他に流れ、商売に悪影響が出るのは確実でしょう。

 作家や芸術家は、特定の政党や政治家の支持を公言しない方が良いと思います。本来、作品の価値と作者の政治的信念は全く関係ありませんが、変な政党や政治家の支持を公言すると、作品にまで変な色がつくリスクがあります。

 一般のビジネスパーソンにとっても同じです。ビジネスをうまく進めるコツの一つは「敵を作らない」ことです。支持政党を公言したりすると、いきなりここでつまずいてしまいます。

 芸術家やビジネスパーソンが支持政党を公言するのは、コンビニエンスストアが店の前に支持政党の立て看板を出すのと同じことです。

 商売を優先するなら政治の話は控えた方がいいし、ビジネスよりも政治的信念の方が大切なら、政治家に転身した方が良いのではないでしょうか。

 山田宏哉記

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2012.12.31 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ