ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3243)

 "紙本主義"の終わりとアマゾンのキンドル生態圏   

 結論から言うと、もはや"紙本主義"の時代ではない。

 Amazonで注文していたKindleのPaperwhiteが届いた。早速、使い始めたのだが、期待していた以上に良かった。

 iPadがリリースされたとき、僕はPDF化した電子書籍を読む端末として期待していた。

 ただ、iPadの電子書籍関連の技術はレベルが高かったものの、いくつか難点があった。iPad本体の重量が重く、長時間持つには腕が疲れる点と液晶ディスプレイの透過光が紙と比べると読みにくかった点だ。

 住宅の物理的なスペースを考慮すれば、極力、書籍は電子化して持ちたいと考えている。ただ結局、iPadで電子書籍を読むのには色々と手間がかかるので、僕は主として紙で本を読んでいた。

 Kindleは、キンドルストアでの書籍の購入から端末での読書の質感に至るまで、非常に高いクオリティで設計されている。おそらくこのインターフェイスは、「紙の本を超えた」と言っても、過言ではない。

 KindleのPaperwhiteは、iPadが抱えていた重量と透過光の読みにくさの問題を解決している。

 Kindleでは、映画や印刷物と同様、文字が「反射光」により映し出されるので、目が疲れにくい。

 また、KindleのPaperwhiteは片手で楽に持て、更に片手だけでページをめくることができる(文庫や新書は、片手だけでページをめくるのが難しい)。

 Kindleだとフォントサイズや行間、字体を自分好みに調節できる。これも、ありがたい機能のひとつだ。

 もちろん、KindleのEインクと紙への印字では、全く同じではないし、「紙の方が好き」と感じる人も多いだろう。

 但し、購入や保管を含めて総合的に判断すると、Kindleと紙の本では、Kindleに軍配が上がると思う。

 何より、「読みたい」と思った本を、キンドルストアで注文して、いきなり読み始めることができるメリットは、とても大きい。

 ウェブの普及以前は、読みたい本があったら、休日に大型書店をはしごしたり、図書館で探すのが一般的だった。

 これで入手できない際は、書店経由で出版社に在庫確認をして、取り寄せる必要があった。読みたい本を見つけてから、実際に読み始めるまでの間に、半月以上の時間差があった。

 「次に読むべき本」は何か。それは、現在読んでいる本の中にヒントがある場合が多い。読むべき本の選定から、実際に読みはじめるまでのタイムラグが2週間あると、1年で24回転しかできない。情報で商売する者がこれでは、明らかに遅れをとってしまう。

 改めて痛感することだが、「新しい技術は採用した者勝ち」だ。Kindleだと続けて7時間くらい読書しても、眼が疲れない。今後、僕がKindleでの読書時間を増やすのは間違いない。

 「人生の本質的叡智」とかを掲げて、「昨今の連中は、小手先の技術やサービス、道具に振り回されていて嘆かわしい」などと賢者ぶる人がいる。

 確かにそういう面はあるかもしれない。しかし、表面的な変化に乗る若者は、時に思慮に満ちた老賢者を打ち倒すのだ。

 山田宏哉記

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2013.1.1 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ