ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3246)

 中村淳彦(著)『職業としてのAV女優』覚書   

 中村淳彦(著)『職業としてのAV女優』(幻冬舎新書)を読了した。

 AV女優に関するリアルな職業案内であり、情報価値が高かった。特に個人的に印象に残った記述を要約すると、以下のようになる。

1. AV女優は、生鮮食品のような商品であり、経験するほど価値が下がっていく。プロの職業としては、異例。

2. AV女優は、求められる基準と労働量が上がる一方なのに、ギャラは下がり続けている。それでも、応募する女性は増える一方で、完全に供給過剰になっている。

3. モデルプロダクションは、現代の女衒業者。撮影現場に女性を派遣しているが、厚生労働大臣の許可を得ていない。厳密には合法的な存在ではなく、その関係者は法律的には灰色の存在。

4. モデルプロダクションを運営するのはアウトロー。青春時代に暴走族、ヒモ、ホスト、チーマー、ギャング、格闘家、AVの男優・女優・監督、風俗嬢、ナンパ師、詐欺師、お笑い芸人、高利貸し、ヤクザ等を経験した人が多い。

5. モデルプロダクションは「脛に傷のある仕事」なので、警察や裁判所、弁護士を介入させることが困難。そのため、背景に味方となってくれる「暴力」がないと、トラブルに対処できない。

6. モデルプロダクションには、政財界、外国の要人、富裕層から「あのAV女優を抱きたい」という依頼がよくある(らしい)。

7. スカウトマンは口説いた女性をモデルプロダクションに紹介するが、その女性の売上金額の15-20%が「スカウトバック」として、半永久的にスカウトマンに支払われる。出演女優の取り分は売上金額の30-40%。

8. 一部のNPO法人に「売春を貧困女性のセーフティネットにせよ」という動きがある。これまでアウトローの独壇場だった女衒業務に、NPO法人が介入して、労働分配率が高まる(出演女優の取り分が増える)可能性がある。

9. 最近のAV業界では、「元芸能人」が大きな注目を集めている。元AKB48のやまぐちりこは、アリスJAPANからAVデビューし、大ヒット。

10.AV業界では、ユーザーの高齢化がネックになっている(若年層はそもそもお金を払ってAVを見ない場合が多い)。ウェブで欲しい情報を入手できない40代、50代の男性が、アダルトメディア購入のボリューム層になっている。

11.1990年代までは、AV女優になるのは、若さと女という武器しかなく、「楽にお金を稼ぎたい」という下層の女性だった。現在では、AV女優への門戸が大幅に狭まり、若さと容姿以外にも何か持っている女性ばかりが選ばれ、勝ち残るようになっている。

12.今も昔も、借金が理由でAV女優を志望する女性は多い。上場サラ金会社の株価とAV女優志願の女性数は、ほぼリンクしている。1990年代、AV女優になったキッカケの借金額は、150-600万円程度。現在は、数十万円の借金で「決意」するケースが多い。

13.AV女優の引退後。著者の実感では、3分の2はキャバクラや性風俗など、長期間働ける風俗業に流れている。その際、"元AV女優"の看板は大きな宣伝材料になる。残りの3分の1は、「女」を売る仕事からは足を洗う。

 つくづく感じたのは、「AV女優は報われない」という点だ。落ち目になった芸能人が「夢よ、もう一度」とばかりにAVデビューをするのも、痛々しいばかりだ。

 また、あまり表に出ることのないモデルプロダクションやスカウトマンの存在は印象的だった。

 特殊な職業・業界ではあるが、本書で書かれている内容は表社会と密接な関係がある。"社会問題"を扱った書としても、一読の価値はあると思う。

 山田宏哉記

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