ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3247)

 情報収集の5%理論   

 現実の仕事や生活の中では、「情報収集が大切だ」という能書きには、さほど意味がない。何しろ、時間とお金には制約がある。

 僕たちはどの道、完全な情報は得られない。最終的には、不完全な情報を元に、決断しなければならない。

 大切なのは、そのような制約の中で、うまくいく確率を少しでも高めることだ。

 従って、情報収集にかける時間と費用は、多過ぎても、少なすぎても、失敗する。

 経験的に言うと、情報収集にかけるべき適正なコストは、"動かす時間/お金の5%"がひとつの目安になる。

 いくつか具体例を挙げて考えてみよう。

 1リットル入りの牛乳1パックの値段は、約¥200。"5%理論"によると、情報収集にかけて良いコストは¥10。よほど暇でない限り、新聞の折り込みチラシで店ごとの牛乳の値段を比較していては、情報収集にコストをかけすぎだ。

 2時間で¥1,800の映画を観るかどうか決める際、"5%理論"によると、6分/¥90のコストをかけるのが適正水準だ。従って、ウェブでキャスト、あらすじ、上映館、上映時間、予告編あたりをチェックして、観るか否かを決めるのが良いだろう。

 携帯電話のキャリア選択の際、24ヶ月契約で毎月1万円がかかるとすると、動く時間/費用は24ヶ月/24万円で、情報収集にかけるべき時間/費用は36日/¥12,000。候補になる数社のショップ店頭に話を聞きにいくくらいのコストはかけた方が良いだろう。

 家賃約7万円の賃貸住宅を2年契約で借りる場合、敷金・礼金や引越し費用等を除くと、動く時間/金額は2年/168万円。

 "5%理論"に照らすと、情報収集にかけるべき時間/費用は、36日/¥84,000が適正となる。直感で即断即決するより、1ヶ月程度かけて情報収集し、候補となる物件をいくつか回ってから決めた方が、良いだろう。

 30年/3000万円の住宅ローンを借りる場合、その5%は1.5年/150万円。充分な時間と費用をかけて検討すべき問題で、不動産屋の口八丁手八丁に乗せられて即断即決したら、悔やんでも悔やみきれない。

 就職は30年/2億円くらいの取引なので、情報収集にかけるべき5%の時間/費用は、その5%の1.5年/1000万円になる。ここでお金をケチる人は、後で後悔することになるだろう。

 なお、直感だけで選んだ選択肢と、情報収集し、比較検討して選んだ選択肢が同じことは結構ある。そういう場合、情報収集にかけた5%の時間/お金が無駄に見えるが、そうではない。

 なぜなら、情報収集には「致命的な選択ミスを防ぐ」という機能があるからだ。映画を例にとれば、予めキャスト、あらすじ、上映館、上映時間、予告編を確認しておけば、「大外れ」を引く可能性が少なくなる。

 こうしてみると、多くの人は、瑣末な問題では情報収集に時間/費用をかけ過ぎている一方、重要な問題の情報収集が不足している実態が浮かび上がる。

 条件の悪い物件に住みながら、ブラック企業に勤務していては、新聞の折り込みチラシで牛乳の値段を比較したり、部屋の電気をこまめに消して節約しても、報われない。

 もちろん、特別な事情が絡む場合は、情報収集にかける時間/費用の比率を引き上げるなどの修正をした方が良いだろう。

 それでも、"動かす時間/お金の5%"というのは、ひとつの目安にはなると思う。

 山田宏哉記

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