ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3255)

 リスクヘッジとしての株式投資   

 国税庁の民間給与実態統計調査によると、2011年の平均給与は409万円(前年比0.7%減)とのことだ。月収に換算すると、34万円。今後も、この数字が上がる材料は少ない。

 「給料が安い」というのは、ビジネスパーソンにありがちな悩みのひとつだ。

 収入を増やすための近道は「本業で頑張ること」ではあるが、業界の構造不況や勤務先の経営不振に巻き込まれると、現実問題として収入は伸びない。

 これは重要な点だが、給料の高い会社の社員が、給料の低い会社の社員より一生懸命働いているかと言うと、必ずしもそうではない。

 社員の給与水準は、事業のビジネスモデルと利益率で大枠が決まる面が大きい。

 常識的に考えても、赤字体質の儲からない会社に勤めていては、あまり高い給料は期待できない。

 仕事の報酬は、承認や評価やポジション、社会的な信用といった非金銭的な要素の占める割合が大きい。

 同僚の2倍の成果を出しても、報酬が同僚の2倍になるような会社は、ごく少数だと思う。成果主義と言っても、せいぜい数千円、数万円の差がつくだけだったりする。

多くの人は、収入を増やすための解決策として、転職を考える。

 私見では、金銭的な理由で転職するのは、得策ではない。雇用契約は、切り替えのコストが極めて高く、通常は後戻りが効かない。しかも、うまくいく保障はない。

 僕は、「収入が少ない」という問題には、株式投資が解決策になるのではないか、と考えている。

 私事で恐縮だが、僕が2013年1月の株式投資で得た収益は、約24万円だった。時期的に幸運ではあったが、これくらい稼げれば、収入に対して特に不満を抱かずに済む。

 魅力的に見える企業が上場企業であれば、転職を検討する前に、株式投資をしてはどうか。転職より株式投資の方が、リスクが低い。

 株価が上がれば、金銭的なリターンを得られるし、株価が下がれば「転職しなくて正解だった」という話になる。

 就職できる企業はひとつだけだが、投資する企業はいくつでも選択することができる。投資している企業がいくつかあると、経済がリアルに感じられるようになり、ビジネスライフは格段に楽しくなる。

 業界全体が構造不況に巻き込まれていると、「仕事があるだけありがたいと思え」という論理が幅を効かせるため、一生懸命働いても、劇的な収入アップは期待できない。こういう立場の人は成長産業の企業に投資することで、収入アップをはかるのも手だろう。

 「業界全体の成長性は高いが、競合との競争が激しい」という立場の人は、競合会社の株を買うのも手だ。競合の分析をするのは実務的にも有益だし、自社が競合に負けても、競合の株価が上がるので、収入面での痛手は避けられる。

 上場企業で働いている人は、インサイダー取引にならない立場なら、自社株を買うのも良いと思う。会社の損益に敏感になり、経営者の視点で事業を考えられるようになる。自社株を持っているからこそ、「会社のために働くことができる」という面はあると思う。

 いずれにせよ、各人の事情に合わせて株式投資を利用すれば、リスクヘッジや収入増のツールとしても使える。

 そもそも、「勤労所得と倹約でお金持ちになる」という発想には、根本的な落とし穴があると僕は思う。

 見も蓋もないことだが、収入を増やすために一生懸命働くのは、おそらく割には合わない。

 乗り物に例えると、勤労所得は「車両の乗り物」で、投資は「空を飛ぶ乗り物」なのだな。車両の乗り物は時速300km程度でスピードの限界に達する。同じく、誰かに雇われて働く限り、報酬は年収1億円程度が限界だろう(若干の例外あり)。

 もちろん、それでも仕事はやる価値があるものだ。ただ、仕事をするなら、金銭以外のものを目的にした方が良いと僕は思っている。

 山田宏哉記

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