ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3256)

  「みんな」という名の不審人物   

 日本には、「みんな」という名の不審人物がいる。

 日本人にとって、「みんな」は圧倒的な権力者だ。「みんなが言っている」「みんなが持っている」と言えば、相手を従わせることができる。

 しかも、「みんな」は実体を持たない。

 僕は長らく、あまり「みんな」とは関わらずに生きてきたと思う。「みんな」とは「多数派」と言い換えてもいい。

 「みんな」の行動や判断に、無条件に追随するようなことは、僕の美意識が許さなかった。

 ところで最近、株式投資をやっていて、「みんな」の存在をリアルに感じることが多々あった。

 自らの判断基準を持たず、トレンドに追随するだけの参加者があまりに多いように感じるのだ。

 特に奇妙だったのが、イー・ギャランティとGMOインターネットの決算発表をめぐる株価の変動だ。

 イー・ギャランティの株価は、日経が好業績を報じた翌日、始値で若干の高値をつけた後は、一方的に下落し、前日の終値を割り込んだ。「意味不明」とは、まさにこのことだ。

 GMOインターネットも決算発表の翌日、なぜか株価が下落した。

 もちろん、両社とも決算の数字の裏付けがある以上、この後、株価は急上昇した(僕も収益を得られた)。

 急騰してから慌てて買うくらいなら、安い値段で放置されている時に買っておけばいいものを、一体何をやっているのだろうか。

 確かに、株価とは「取引成立価格」という点には注意を要する。

 いくら売り手が「好決算だから高く売れるだろう」と思っても、買い手が「様子見しよう」と判断すれば、株価は下がるしかない。

 好業績決算の会社の株価が原因不明の理由で急落すると、株の保有者の間で「何か自分の知らない悪材料があるのではないか」という疑心暗鬼が生まれる。こうなると「狼狽売り」が加速し、株価は更に落下する。

 僕はこういうとこに「みんな」の存在を感じる。

 株価が上昇トレンドにある時に追随して買い、下降トレンドになったら追随して売るだけの「みんな」には、何のポリシーも感じられない。

 投資で大きく勝つのは、このタイミングで、「悪材料などない」と判断し、大量の買いを入れる人だと思う。

 この局面で、「少なくとも、公表された悪材料はない」と判断するためには、やはり一定の勉強と情報収集が必須だと思う。

 決算書の数値や日経新聞の報道をフォローしていない「みんな」は、原因不明の急落局面で「狼狽売り」をしがちだ。

 「みんな」に追随しても、たぶん、いいことはない。株式投資をするにも、高値でつかまされて、安値で狼狽売りをする。これでは、やっていて楽しくもないだろう。

 「みんな」の判断や行動に従う必要など、全くない。それでは、負けるだけだろう。

 何も株式投資に限った話ではないが、特に株式投資では成果が明確になる分、この点を強く感じる。

 山田宏哉記

【関連記事】
リスクヘッジとしての株式投資(2013.2.2)
勤労の国の幸福なサラリーマンたち (2013.1.27)
公務員の"駆け込み退職"騒動の本質(2013.1.26)
株式投資の「究極の目標」とは何か(2013.1.23)
シャープ株の売買で気付いたこと(2013.1.17)
"試練の場"としての株式投資(2013.1.14)
中村淳彦(著)『職業としてのAV女優』覚書(2013.1.4)
読書の費用を回収できるか(2013.1.4)
いかに「読むべき本」を確保するか(2013.1.4)
"紙本主義"の終わりとアマゾンのキンドル生態圏(2013.1.1)
信仰告白のビジネスモデル (2012.12.29)
iPhoneの防水ケースと家電量販店の終わり(2012.12.26)
なぜ、デートでサイゼリヤに行ってはいけないのか?
(2012.12.22)
ペニーオークション詐欺の教訓(2012.12.22)
汗で稼いだ一万円、投資で稼いだ一万円(2012.12.19)
実務に活かす株式投資(2012.12.15)
アウトソーシング時代の働き方(2012.12.8)
「飽きないこと」を仕事にする(2012.12.2)
ビジネスに活かす優先的選択(2012.11.27)
もしも世界が男女10人ずつの高校の教室だったら
(2012.11.25)
"ホームレス転落"という悪夢 (2012.11.24)
映画『シルク・ドゥ・ソレイユ』に学ぶ人材配置 (2012.11.18)
シュートを打つ人、パスに逃げる人 (2012.11.17)
若さゆえの飢餓感 (2012.11.17)
動物王国としての実社会 (2012.11.11)
人生を語る不誠実さ (2012.11.11)
映画『009 RE:CYBORG』覚書(2012.11.4)
なぜ、経歴を詐称するのか(2012.11.3)
愛は地球を救えない(2012.10.24)
労働貧困層と生活保護(2012.10.22)
ルサンチマンのある人生(2012.10.18)
世界は"不本意な職業"で溢れている(2012.10.15)
不本意な職業を受け入れる(2012.10.13)
僕たちは「格差社会」を望んだ(2012.9.24)
「人間好き」のファシズム (2012.9.17)
強者はデモに参加するか(2012.9.15)
撤退戦としての介護(2012.9.1)
「仲間外れ」の構造(2012.6.26)
反知性主義の国・日本(2012.6.24)
日本人の7割には、中学の教科書レベルの知識もない
(2012.6.23)
読書を実務に活かす暗黙のプロセス (2012.6.23)
教職に逃げる大人たち (2012.6.21)
あの人が嫌われる理由 (2012.6.4)
最近の若者はバカばかり(2012.5.26)
「カネのため働く」という建前(2011.12.25)



2013.2.9 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ