ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3258)

 お金を稼ぐ力、組織を泳ぐ力   

 ビジネスパーソンなら、薄々気付いていると思うが、「お金を稼ぐ力」と「組織を泳ぐ力」にはかなりの差がある。

 結論から言えば、僕は「組織を泳ぐ力」よりも、資産運用を含めた「お金を稼ぐ力」の方が大切だと考えている。

 更に言えば、ビジネスをする上で最も重要な能力は、「安く買う能力」と「高く売る能力」だと僕は思っている。何しろ、この差分こそが利益の源泉になる。

 但し、実務の世界では、人格や人柄のような"不純物"がモノを言う。あまり勉強をしなくても、体育会系のノリで良い評価を得られたりする。

従って、日本企業で働く上で大切なのは、多くの場合、「お金を稼ぐ力」よりも「組織を泳ぐ力」の方だ。

 また、一般的な日本企業では、チームプレーが重視されるので、個人の判断や責任はそれほど強く問われない。従って、わざわざ勉強するインセンティブは強くない。

 従って、普通の会社員は、会社の「内側」に眼を向けた方が、何かと得かと思う。

 組織の内部を泳ぐだけなら、社外の情報を収集する必要はないと思う。

 日本企業の末端のスタッフで、会社の売上や利益のことを考えている人は少ないと思う。従業員の目線に立つと、大事なのは「会社の損益に貢献すること」ではなく、「組織を泳ぎ、雇用を確保すること」だ。

 極端な話、末端のスタッフであれば、会社の売上や利益すら、知る必要はない。馬車馬のように働けば、それで事足りる。

 是非はさておき、日経新聞やビジネス雑誌を読むより、職場の宴会で裸踊りでもしていた方が、収入も増えるだろう。

 もっとも、これは収入が勤労所得に限定されていて、なおかつ、ひとつの会社で定年まで働き続けることを前提にした場合だ。

 株式投資などの副収入があったり、転職や独立も検討している場合、会社の「外側」に眼を向けた方が圧倒的に収益が増える。株式投資や転職で動く金額と比べれば、日経新聞やビジネス雑誌の購読料などは安いものだ。

 ロクに勉強もせずに、人柄の良さだけで組織を泳ぐスタイルを否定するつもりはない。組織を泳ぐのが上手な人は、合意や根回しを大切にする。ビジネスよりも人間関係を優先する。もちろん、これは悪いことではない。

 このようなコミュニケーション能力は、「企業で働くために必要な能力」ではあるが、ビジネスの核心部分から少しズレている。

 いずれにせよ、「お金を稼ぐ力」と「組織を泳ぐ力」は、どちらも「仕事」と一言で片付けられがちだが、この差を認識することは、非常に重要だと思う。

 山田宏哉記

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2013.2.16 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ