ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3259)

 残業を良しとする"村の論理"     

 私の皮膚感覚で言うと、日本ではいまだに「残業を良し」とする価値観が色濃く残っているように感じる。

 特に、以下のような点は、日本企業で働いている人であれば、思い当たるような節があるのではないだろうか。

1. 残業時間の多さを自慢する人がいる
2. 自分の仕事が終わっても、何となく帰りにくい雰囲気がある
3. 残業代を前提にした生活をしている

 まず、ハッキリさせて置きたいのは、残業を良しとするのは、「村の論理」であって、「経営の論理」ではないことだ。

 経営の論理で言えば、仕事は定時間内に終わらせるのが大原則だ。決められた時間内で仕事を終わらせることができない社員は、単に"無能"であるに過ぎない。

 多くの経営者は、株主に対して、総額人件費の抑制を約束している。

 経営視点で見れば、残業が発生すれば、その分、余計な人件費がかかり、企業の収益を圧迫する。残業はあくまで必要悪だ。

 私見では、残業時間が多い人は仕事そのものが遅い。

 見た目はバタバタしているかもしれないが、本質や核心部分を理解しておらず、余計なことをしている。社内向けの資料を、パワーポイントで過剰レイアウトしたりするのは、その典型例だ。

 確かに、日本の職場には「農村共同体」の名残が残っていて、それが「経営の論理」と衝突することは多々ある。

 残業時間の多さを自慢する人も「何となく帰りにくい雰囲気だから」という理由で残業する人も、結構いる。

 ひとりだけ早く帰るのが、躊躇されるような雰囲気の職場は、今でも結構あると思う。しかし、本来、自分の仕事が終わっているなら、残業しなくても何の問題もない。

 残業代目当てで、残業をしている場合に至っては、そもそも「残業を減らす」というインセンティブが働かない。

 但し、会社は業績が悪化すると、残業削減施策を打つ。残業代を前提にしていると、一気に生活が苦しくなってしまう。

 社内向け資料の過剰レイアウトのために残業するような社員は、村の論理では立派かもしれないが、経営視点では「給料泥棒」同然だ。

 上記のように「村の論理」と「経営の論理」は、よく衝突するものだが、中長期的に見れば、「経営の論理」が優勢になるだろう。おそらく、今はその過渡期にある。

 職場の宴会で裸踊りをする人が出世するような企業文化は、「村の論理」そのものだ。
今すぐなくなることはないだろうが、こういう「村の悪習」は、徐々に廃れていくと思う。

 「経営の論理」で、ビジネスをしたい人にとっては、良い時代が到来するわけだが、大切なのは、あまり焦り過ぎないことだと思う。

 今はまだ「村の論理」から「経営の論理」への移行期なので、ある程度、「村の論理」も尊重した方が良いことだ。

 残業に対する考え方も、今はまだ過渡期にある。

 いずれは、「残業は悪」とする認識がスタンダードになるだろうが、今はまだ、その時ではない。現実問題としては、あまり極端な立場を表明しない方が賢明な部分だと思う。

 山田宏哉記

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