ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3261)

 薄給の時代 、副業の損得勘定      

 2013年2月27日付の日経新聞に「減収時代、副業に活路」という特集記事が掲載されていた。

 「給料の伸び悩みで副業を検討する人が増えている」という趣旨で、具体的な事例も紹介されている。

 この問題を考える上で、まず押さえておきたいのは「副業と副収入は違う」という点だ。

 企業が雇用者に対して禁止することができるのは、雇用契約が重複する副業のみであり、株式の運用や家賃収入、原稿料や印税などの副収入は禁止できない。

 ここでは、副業を「本業以外の労使契約を結び、勤労所得を得ること」と定義し、株式の配当、原稿料、ウェブサイト運営からの収入等を含まずに、考えてみたい。

 深夜のコンビニやファミリーレストランで働いたりするのが、典型的な例だ。

 意外に思われるかもしれないが、僕は「原則、副業はしない方がいい」と考えている。割に合わないからだ。

 例えば、年収240万円(月給20万円、ボーナスなし)の薄給サラリーマンがいるとする。

 仮に月間労働時間を160時間とすると、時給換算で¥1,250。残業代は25%以上の割り増しになるので、法律を遵守する企業なら、残業の際の時給は¥1,560以上になる。

 会社の業績次第ではあるが、収入が少なくて生活が苦しいなら、まずは副業をするより、残業を増やした方が得策だとは思う。

 耳を澄ましていると、「今月は残業代が減って、ヤバい」といった会話が聞こえてきたりする。残業代目当てに会社に居残る人はいるものだし、副業をするより、金銭的に懐が温まる面があるのは、否定できない。

 世間一般だと、時給¥1,500以上のアルバイトを見つけるのは結構難しい。あったとしても、本業への悪影響が懸念されるだろう。

 もちろん、サービス残業を強要してくるようなブラック企業の場合、残業代には期待できない。

 それでも僕は、ビジネスパーソンが時給¥1,000程度でファミレスやコンビニの店員をするのは、割に合わないと思う。

 人間の集中力には限界がある。

 昼間は本業をやり、深夜にコンビニ店員をするような生活では、その分、集中力が分散してしまう。これでは、仕事を「こなす」ことはできても、圧倒的な成果を出すのは難しい。本業でライバルに遅れを取るようでは、本末転倒だと思う。

 もちろん、「薄給の上、サービス残業を強要される」という労働環境が劣悪であることは明らかだ。

 ただ、そういう状況の人が活路を見出す先は、"副業"ではなく、"転職"ではないだろうか。

 山田宏哉記

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