ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3265)

 なぜ、ユニクロの離職率は高いのか        

 東洋経済(2013年3月9日号)の記事「ユニクロ 疲弊する職場」(http://toyokeizai.net/articles/-/13101)を読んだ。

 本記事によると、ユニクロの3年内離職率は、2007年新卒入社で37.9%、08年入社46.3%、09年入社53.0%、10年入社47.4%であり、同業の中でもかなりの高率だという。

 この記事では、この原因部分を取材しており、読み応えのある内容となっている。記事の内容が事実だとすると、ユニクロの離職率が高い理由は、以下の5つに分けられると思う。

1.仕事そのものがつまらない
2.職業的な技能が身に付かない
3.反知性主義の職場環境
4.一度失敗すると、もう出世が期待できない
5.経営陣や本社が、現場の実情を知らない

1.仕事そのものがつまらない

 記事を読む限り、「ユニクロの仕事はつまらなそう」だ。細かいことまで全て決められていて、工夫や改善をする余地が少ない。

 ユニクロの店長には裁量が殆どない。什器の設置や商品の陳列方法などは、色の並び順まですべて決まっている。店長の裁量でできるのは、在庫の発注とスタッフの採用くらいしかない。

 では、何がメインの仕事なのか。ひたすら品出し(陳列作業)と商品整理。。

 ユニクロの店員は、特に人間である必要はないのではないか。今のところ、そういう作業をできるシステムやロボットがないから、人間を使っているだけのように思える。

2.職業的な技能が身に付かない

 記事から判断すると、ユニクロの店長をやっても、おそらく店舗運営に必要な技能は身に付かない。買値と売値の決定はおろか、商品の選定や陳列方法にすら関与できないからだ。

 ビジネスの核心部分は、「いくらで買って(仕入れて)、いくらで売るか」にある。余談だが、株式投資をやっていると、買値と売値の決定こそ、ビジネスの最重要部分だとよくわかる。

 売値と買値に関与できない店舗の店長に期待されている役割は、おそらく人材のマネジメントに限定される。確かに、人材のマネジメントは大切だ。

 だが、人材マネジメントなら、一般の会社組織でもできる。人材マネジメントだけをするために、ユニクロで働く価値があるかと言えば、たぶんないだろう。

3.反知性主義の職場環境

 ユニクロで働く上で必要なのは、「大量のマニュアル暗記」のようだ。大事なことは本社が決め、マニュアルになっているので、自力で何かを考える必要は殆どない。

ユニクロの店長になるには、筆記試験の教科書となる「店長マニュアル」の"筆写"が欠かせない(社外秘なので持ち出せない)。厚さは10cm。社員は、筆写したマニュアルを手に、勤務後もファミレスなどで勉強するようだ。

 こういう職場環境で働いていると、自力で何かを考える力が、どんどん落ちていくように思える。

4. 一度失敗すると、もう出世が期待できない

 記事から判断する限り、ユニクロの人事制度は、懲罰や降格に重きを置いている。しかも、"敗者復活"が難しい。個人的には、この手の企業では働きたくない。

5. 経営陣や本社が、現場の実情を知らない

 現場のユニクロ社員がサービス残業を訴えていても、経営陣は「サービス残業はない」と言い張る。経営陣や本社は、現場の実情を何も理解していない、と考えられる。

 以上のような事情を考慮すると、ユニクロの離職率の高さにも納得がいく。

 但し、と僕は思う。

 たまたまユニクロが取り上げられたが、小売の世界では、実店舗が重要であり、どうしても人海戦術が必要になる。

 小売が、もともと「ブラック企業」になりやすい事業領域であることは、確かだ。

 実際問題として、仕組みやビジネスモデルを考える人材は少数でよく、大多数は現場で馬車馬のように働くことが大切だ。これをユニクロ固有の問題のように言うのは、少々酷だとは思う。

 山田宏哉記

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2013.3.13 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ