ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3267)

 "コモディティ化"とは何か       

 最近、ビジネスの文脈で"コモディティ化"という用語を良く聞くようになった。

 例えば、「日本の家電メーカーの経営不振は、PCや液晶パネルの"コモディティ化"が原因だ」とか「人材も"コモディティ化"するので、高い技能を身に付けなければならない」といった使われ方をする。

 何となく、言わんとすることは理解できる。

 PCや液晶パネルの"コモディティ化"と言えば、「競争激化による価格低下」くらいに解釈すれば良さそうだし、人材の"コモディティ化"と言えば、「新興国の賃金が安い人に仕事を奪われる」くらいの解釈でも良さそうだ。

 しかし、それは正確な理解だろうか。また、正確な用語の使い方だろうか。

 そもそも、コモディティとは何を指しているのか。

 柴田明夫(著)『図解 世界の資源地図』(中経出版)を読んでいたところ、僕はようやく、コモディティの正体がわかった。

 コモディティとは、もともと資源の文脈で使われる用語だ。原油や鉱物など、加工されていない一次産品を指す。直訳すると、国際市況商品などとなる。

 コモディティ(国際市況商品)には、いくつかの特徴がある。特に重要なのは、同質で大量に取引される点と、需要と供給があまり変化せず、価格が大幅に変動する点だ。

 果たして、PCや液晶パネルや人材は、"コモディティ化"するのか。

 言うまでもなく、PCや液晶パネルは「加工されていない一次産品」ではないので、用語の厳密な意味に照らすと、"コモディティ化"などしない。

 仮にPCや液晶パネルを原材料別に分解して、資源として売却するとしたら、確かにそれは"コモディティ化"だが、そうではないだろう。

 では、コモディティ(=加工されていない一次産品)の特徴には、適合するか。

 確かに「同質で大量に取引される」という特徴は当てはまるが、「需要と供給が変化しない」という特徴には当てはまらない。

 また、コモディティの価格は急騰することもあるが、PCや液晶パネルの価格はほぼ一方的な値下がりなので、正確には、価格面での特徴にも当てはまらない。

 人材に至っては、「(ジャングルで育った野人ならともかく)加工されていない一次産品」でないのは当然、「同質で大量に取引される」という特徴にすら適合しない。

 要するに、"コモディティ化"という用語は、所詮、一次産品の「同質で大量に取引される」というイメージを示す比喩でしかない。しかも、かなり不正確な。

 確かに、"コモディティ化"のような用語を持ち出すと、何かを語ったような気にはなるかもしれない。しかし、その中身は単なる比喩でしかない。

 わざわざ、"コモディティ化"などという用語を持ち出さなくても、PCや液晶パネルなら「競争激化による価格下落」、人材なら「新興国の労働者やロボットに代替されるレベル」などと書けば済むことだ。

 "コモディティ化"に限ったことではないが、定義が不明瞭な用語を持ち出して、何かをわかったつもり、何かを語ったつもりになるのは、頭が悪い証拠だろう。

 ごめんなさい。僕も何度か使っていました。

 山田宏哉記

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2013.3.20 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ