ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3270)

  「パンを分け合う仲間」としての会社      

 日本では、春が新年度の始まりとなる。春は、出会いと別れの季節でもある。

 身近な人が会社を去ったりすると、色々と感慨も湧いてくる。

 会社の人間関係は独特なものだ。企業によって温度差が大きいが、少なくとも、家族や知人友人、学校のクラスメートや地域のコミュニティの人間関係と大きく異なることは、共通していると思う。

 「企業と雇用契約を結ぶ」という言い方と「入社して組織の一員になる」という言い方では、指している内容は同じでも、受ける印象がだいぶ違う。

 僕の感覚は前者に近いが、後者の感覚でいる人の方が、組織で働く醍醐味が得られるような気はしている。

 数年前、「君には"ここしかない"という気持ちがない」と指摘されたことがあった。会社で働く上での"誠意"がない、という趣旨だった。これは確かにその通りだったと思う。
カンパニーとは仲間の意味であり、もともとは「パンを分け合う仲間」のことだったようだ。

 会社の人間関係が「パンを分け合う仲間」だとすると、その関係性はドライでもあり、ウェットでもある。運命共同体でありながら、自分の意志で離脱する自由もある。

 会社の人間関係は、「パンの獲得」という目的を共有しているので、「パンの獲得」に貢献できれば、自分の居場所を確保できる。

 他の構成員と上手くやれれば、細かい趣味や嗜好はあまり関係ない。

 逆に、いくら性格が良くても、「パンの獲得」に貢献できない限り、居場所はない。

 「パンの獲得」に貢献する方法は色々ある。「パンがある場所」の情報、現場作業、輸送、競争相手の排除、後方支援など、基本的には自分の得意な分野を担当するのが良い。担う役割の重要性によって、パンの分け前の量が違ってくるが、むしろこの方がフェアだ。

 僕自身は人間関係にドライな気がするが、「パンを分け合う仲間」の文脈であれば、自分の立ち位置を確保できるし、案外、誰とでもコミュニケーションを取ることができた。
少なくとも、会社ではパンの話をしていれば、大きく外すことはない。

 一方、プライベートな人間関係だと、相手の趣味や嗜好に合わせた話題を提供しなければならない。空気を読まないなら別だが、これは結構、難易度が高い。

 僕にとっては、流行のお笑い芸人や贔屓のスポーツチームの話題は、苦痛でしかない。仕事の話をしていれば良い人間関係は、とても楽だと感じる。

 地域のコミュニティ等の人間関係と比べれば、「パンを分け合う仲間」の人間関係は、僕にとって、はるかに快適に感じる。

 山田宏哉記

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2013.3.30 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ