ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3274)

 誰が「腐った人材」を養うのか      

 最近、「追い出し部屋」について、報じられる機会が増えている。要するに、解雇したい従業員を自主退職に追い込むための部署なり施設のことだ。

 僕は、追い出し部屋の是非を云々しても、あまり意味がないと思う。

 問題の本質は、「誰が"腐った人材"を養うのか」という点にあるからだ。

 優良企業かブラック企業かを問わず、「給料以下の成果しか出せない人」への処遇は厳しいものにならざるを得ない。こういう人が職場の多数派になれば、たちまち業績は急降下する。

 腐ったリンゴは早めに廃棄処分しないと、周囲のリンゴまで腐らせてしまう。

 また、一度「腐った人材」に転落すると、再起は難しい。10代、20代の頃についた技能や能力の格差を、30代以降に逆転できるか。よほどのことがない限り、逆転はできない。

 根本的に考えれば、給料以下の成果しか出せない従業員は、解雇するのが合理的だ。

 但し、日本の労働基準法は厳しいので、簡単には解雇できない。「追い出し部屋に配置転換して、自主退職に追い込む」というのも、そのような事情を抱えた日本企業にとっての、ひとつの解決策に過ぎない。

 「腐った社員の廃棄」が必要と考えるのは、優良企業もブラック企業も同じだ。ブラック企業には、追い出し部屋などなく、(労働基準法違反覚悟で)いきなり解雇となる。

 それを思えば、給料を貰いながら転職活動ができる「追い出し部屋」は、結構恵まれているのではないか。

 そもそも、誰が能力も意欲も低い「腐った社員」を養うべきなのか。「腐った社員」に高過ぎる給料を払い、雇用し続けるのは、企業の義務なのか。

 現状では、公務員や天下り団体、大企業が「腐った人材」の受け入れ先になっている。難しいのは、仮に彼らを解雇したとしても、おそらく現在の生活レベルを維持できる再就職先がないことだ。

 経済合理的には、「腐った人材」には、プライドを捨て、年収200万円の単純労働者として、やり直してもらうしかない。「誰にでもできる仕事」を年収200万円でやってもらう。そうでなければ、誰も雇いたいとは思わない。

 ただ、常識的に考えると、さすがにこれは気の毒だ。

 個人的には、「腐った人材」を養うのは、優秀な人材の義務だと思う。優秀な人材が稼いだ利益を、腐った人材の給料や生活保護の給付金に回す。結局は、こうするしかない。

 優秀な人材には、腐った人材の食い扶持まで稼ぐ義務があるし、実際に稼いでいる。

 自分が優秀な人材の側であれ、腐った人材の側であれ、このことを忘れてはいけないと僕は思っている。

 山田宏哉記

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2013.4.13 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ