ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3275)

 ビジネスでは、あまり努力しない方が良い理由    

 「真面目に努力する者が報われる」というのは、日本人好みの幻想だ。

 僕自身、どこかでそう信じて生きてきたし、10代20代の頃は、まさに"努力の鬼"だったと思う。

 社会人になった頃は、僕も誠実で勤勉だった。

 いち早く、仕事の能力を高めるために、勤務時間と学習時間の合計が1日16時間になるようにしていた。

 ところが、誰よりも努力しているつもりなのに、パフォーマンスも評価も平均以下だった。

 この時期は本当に苦しかった。"努力の鬼"だった僕は、「まだまだ努力が足りないのだ」と考え、必死に働き、勤務時間外には仕事関連の勉強をしていた。

 こうして報われない期間が何年も続いた。相変わらず、パフォーマンスは冴えなかった。ここまで費用対効果が悪いと、もはや自分を「無能」と決め付ける他はなかった。

 結局、僕はアホらしくなって、無駄に努力するのをやめた。残業を大幅に減らし、面倒なことはなるべく楽にできるようにした。

 余暇に本業関係の勉強をするのは止め、私腹を肥やすため、投資関係の勉強をすることにした。

 その結果、どうなったか。皮肉なことに、努力を放棄した後の方が、パフォーマンスが逆に高まった。

 あまり「日本人好み」の話ではないだろうが、今なら、その理由がわかる。

 そもそも、ビジネスは「"楽な仕組み"を作った方が勝ち」というルールで動いている。

 単純に言えば、より便利で、より快適なモノやサービスを提供する企業が、顧客の支持を得て、売上と利益を拡大する。要するに、顧客は「"面倒くさいこと"の解決」のために、対価を払っている。

 大きく言えば、人類はこうして、現代社会を築いてきたのだ。

 ビジネスパーソンにとって、「面倒くさい」という感覚は、顧客の要望や市場のニーズを読み取る上で、決定的に重要だ。

 仲間と共同作業をする上でも、「面倒くさい」という感覚を共有しているからこそ、意思疎通も円滑に進む。

 ところが、下手に意欲を高めて努力したりすると、この感覚が鈍ってしまう。

 「俺はこんなに努力している」みたいなスタンスだと、顧客や同僚と感覚がズレてしまう。その結果、パフォーマンスと評価が低下する。

 「面倒くさいなんて、気がたるんでいる」などと精神論を垂れるようでは、もはや末期症状だ。

 「そんな作業、面倒くさいよね」という感覚こそ、ビジネスでは利益と成果に直結する。ビジネスで結果を出すためには、あまり努力をしない方が良い。

 公言するのは憚られるが、現実には、真面目に努力するより、寝転がって「なるべく楽をする方法」を考えていた方が、遥かにパフォーマンスが向上するのだ。

 山田宏哉記

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2013.4.20 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ