ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3276)

 "愚直さだけが取り柄"のボリューム層   

 メディアに登場する人材像は、いつもトップクラスの優秀層を想定している。

 「一流大学を卒業して、一流企業に就職し、高給取りのグローバル人材になる」などの話は、日本のボリューム層にはあまり関係ない。こういう働き方ができるのは、ごく一部の恵まれた人に過ぎない。

 平均的な能力の若者の前に立ちはだかるのは、もっと過酷な労働環境である。

 日本のボリューム層は、いわば「愚直さだけが取り柄」だ。読書の習慣もないし、中学生レベルの知識もない。コンピュータやロボット、人件費の安い新興国の人材との競争もある。

 日本のボリューム層は、どのような職に就き、どのように働けば良いのか。個人的には「生身の人間というメリットを活かす」というのが、まずはポイントだと思う。

 就職前の学生は、漠然と「綺麗なオフィスでデスクワーク」をするものと考えていないだろうか。

 確かに、「綺麗なオフィスでデスクワーク」をする人は、現代日本の一大勢力だ。しかし、僕はこういう人材は、将来的にあまり必要なくなると考えている。

 事務処理をする人は、それほど数はいらない。しかも、事務代行のアウトソーシング会社でもない限り、事務処理のコストが増大すると、企業の収益を圧迫する。

 一般に、「人気がない」と思われている業界・業種・職種は、平均的な能力の若者の雇用吸収先となっている。

 具体的に言うのは気が引けるが、小売や外食、介護、ビルメンテナンス、物流、警備・清掃業者などだ。但し、これらの業種は、「綺麗なオフィスでデスクワーク」より、中長期的な雇用が安定していると僕は思う。

 また、小売や外食は採用段階で優秀な人材を集められないからこそ、餃子の王将のような「スパルタ研修」で戦力化する必要があるという説がある。

 労働環境の悪さを脇におけば、「愚直さがだけが取り柄」という層を雇用し、店でお客さんの前に出せるレベルまで引き上げるのは、社会的に意義のあることだと個人的に思う。

 「愚直さだけが取り柄」という人は、就職した後も、「挨拶の練習」とか「率先して荷物運びやゴミ捨てをする」とか、そういう基本動作を大切にした方が良いと思う。

 大抵の職場では、「ゴミ捨て」とか「荷物運び」とか「蛍光灯の交換」とか「労多くして、益少なし」の雑務がある。

 「頭のいい人」はこういう仕事をやりたがらない。「愚直さだけが取り柄」の人は、この種の雑務を全面的に引き受けるのが得策だ。「愚直さだけが取り柄」でも、案外、これだけで「頭がいい人」に逆転勝ちできる。

 僕はボリューム層の若者が生き残る道は、「現場で生身の人間として、直接サービスを提供すること」だと考えている。

 「人間力」とは、バカみたいな教育理念だったが、高度情報化社会において、「コンピュータとロボットが人間の職を奪う」という文脈においては、実に的を射たコンセプトだった。

 今こそ、愚直さだけが取り柄のボリューム層にとって、「人間力」がモノを言う時代なったのだと思う。

 山田宏哉記

【関連記事】
ビジネスでは、あまり努力しない方が良い理由(2013.4.20)
誰が「腐った人材」を養うのか(2013.4.13)
「パンを分け合う仲間」としての会社(2013.3.30)
なぜ、あの人は「本を読むバカ」なのか(2013.3.26)
「やればできる」の仕事論(2013.3.23)
なぜ、ユニクロの離職率は高いのか(2013.3.16)
若者よ、貯金は止めた方が良い(2013.3.12)
英語公用語化の真意(2013.3.9)
薄給の時代 、副業の損得勘定(2013.3.2)
株で勝つのが難しい理由 (2013.3.2)
残業を良しとする"村の論理" (2013.2.24)
お金を稼ぐ力、組織を泳ぐ力(2013.2.16)
「みんな」という名の不審人物(2013.2.9)
リスクヘッジとしての株式投資(2013.2.2)
勤労の国の幸福なサラリーマンたち (2013.1.27)
公務員の"駆け込み退職"騒動の本質(2013.1.26)
株式投資の「究極の目標」とは何か(2013.1.23)
シャープ株の売買で気付いたこと(2013.1.17)
"試練の場"としての株式投資(2013.1.14)
中村淳彦(著)『職業としてのAV女優』覚書(2013.1.4)
読書の費用を回収できるか(2013.1.4)
いかに「読むべき本」を確保するか(2013.1.4)
"紙本主義"の終わりとアマゾンのキンドル生態圏(2013.1.1)
信仰告白のビジネスモデル (2012.12.29)
iPhoneの防水ケースと家電量販店の終わり(2012.12.26)
なぜ、デートでサイゼリヤに行ってはいけないのか?
(2012.12.22)
ペニーオークション詐欺の教訓(2012.12.22)
汗で稼いだ一万円、投資で稼いだ一万円(2012.12.19)
実務に活かす株式投資(2012.12.15)
アウトソーシング時代の働き方(2012.12.8)
「飽きないこと」を仕事にする(2012.12.2)
ビジネスに活かす優先的選択(2012.11.27)
もしも世界が男女10人ずつの高校の教室だったら
(2012.11.25)
"ホームレス転落"という悪夢 (2012.11.24)
映画『シルク・ドゥ・ソレイユ』に学ぶ人材配置 (2012.11.18)
シュートを打つ人、パスに逃げる人 (2012.11.17)
若さゆえの飢餓感 (2012.11.17)
動物王国としての実社会 (2012.11.11)
人生を語る不誠実さ (2012.11.11)
映画『009 RE:CYBORG』覚書(2012.11.4)
なぜ、経歴を詐称するのか(2012.11.3)
愛は地球を救えない(2012.10.24)
労働貧困層と生活保護(2012.10.22)
ルサンチマンのある人生(2012.10.18)
世界は"不本意な職業"で溢れている(2012.10.15)
不本意な職業を受け入れる(2012.10.13)
僕たちは「格差社会」を望んだ(2012.9.24)
「人間好き」のファシズム (2012.9.17)
強者はデモに参加するか(2012.9.15)
撤退戦としての介護(2012.9.1)
「仲間外れ」の構造(2012.6.26)
反知性主義の国・日本(2012.6.24)
日本人の7割には、中学の教科書レベルの知識もない
(2012.6.23)
読書を実務に活かす暗黙のプロセス (2012.6.23)
教職に逃げる大人たち (2012.6.21)
あの人が嫌われる理由 (2012.6.4)
最近の若者はバカばかり(2012.5.26)
「カネのため働く」という建前(2011.12.25)



2013.4.20 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ