ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3278)

 なぜ、月給14万円の介護人材は不人気なのか     

 先日、福島県に行った折、ハローワークや情報誌で求人情報をチェックした。

 気付いたのは、比較的、介護人材の募集が多くなっていたことだ。ハローワークの資料では、盛んに介護関連の職業が推奨されている。

 但し、正社員でも月給が14万円台が相場で、労働条件は恵まれていない。日本において、介護は有望かつ必要な業種だが、就職先としての魅力は薄い。

 求人が多いというのは、それだけ人手不足の裏返しだと考えられる。

 なぜ、介護の仕事はあまり人気ないのか。

 よく言われるのが、"薄給"である。福島県の求人情報では、時給\850で介護スタッフを募集しているケースもあった。確かに「これで生活できるのか」という疑問は湧く。

 しかし、介護人材が人手不足になる本当の理由は、別にあると考えている。

 仮に介護人材の月給の相場が、14万円から30万円に上がっても、あまり人気の職業にはならないと思う。

 僕は、介護の職場に人気がない理由に「遅かれ早かれ、患者が亡くなる」という点があると考えている。

 人間は、本能的に死を感じさせるものを日常生活から遠ざける。だが、介護の職場では、日々、人の老衰と死を意識せざるを得ないだろう。精神衛生上、これはあまり良くないと思う。

藤原新也氏によると、インドではカーストの最下層が、火葬の仕事をしているそうだ。日本でも、一昔前は、葬儀業者に対する差別意識があったように思う。

 社会の多数派は、本能的に「人の死に触れる職業」を避ける傾向にある。

 介護においても、「自分が介護している患者さんが、次々と亡くなっていく」というのは、感情的なストレスが非常に大きいのではないか。

 患者が亡くなる度に落ち込むわけにもいかず、かと言って「亡くなってスッキリした」と喜ぶわけにもいかない。かなり複雑な感情コントロールが必要だと思う。

 私見では、介護に人が集まらない決定的な理由は、"薄給"よりむしろ「人の老衰と死に接する感情的ストレス」の方にある。"薄給"でも、警備や掃除屋には人が集まる。

 介護は、否応なしに、人の老衰と死に直面することになる。これは、多くの人が本能的な拒否反応を起こす部分だ。

 ところが、国も事業者も、一番肝心な部分を曖昧にしたまま、介護人材を募集している。案外、その不誠実さこそが、介護の人材不足の原因になっていると、僕は思う。

 山田宏哉記

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