ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3281)

 勉強で得られる知識は、価値が低い      

 中長期的には、マニュアルで記述できるレベルの作業は、コンピュータやロボット、新興国の人件費の安い人材で代替できると僕は思う。

 そのとき、問題になるのは、働いている人の大半が、余剰人員になってしまうことだ。

 ビジネスパーソンは、生き残りの条件として、「高い専門性」を挙げることが多い。

 今の今でも「コツコツと勉強して、高い専門性を身に付ける」のが安定した雇用や収入に結び付くと考えられている。

 これは、本当なのか。実のところ、僕はこの前提そのものを疑っている。

 ビジネスの世界で直接評価の対象となるのは、実務経験と実績であって、専門性や能力ではない。

 雇用不安が高まると、多くの人は資格習得やスキルアップに精を出す。ただ、単純な話、他の人と同じことをしていても、差別化にはならないだろう。

 専門性や能力は、個人的に努力すれば身に付けられる。誰にでも機会が開かれている分、希少価値が薄い。経済合理的には、買い叩かれて当然だ。

 勉強で得られる知識の価値が低下した背景にあるのは、言うまでもなく、情報技術の進化だ。ウェブの情報量は拡大する一方であり、e-ラーニングで学校教育を受けることも可能になった。

 獲得すべきは、希少価値の高い「経験と実績」であって、希少価値の低い「スキルや専門知識」ではないと思う。

 一例として挙げられるのは、大学で真面目に勉強し、良い成績を取る人が、就職できるわけではない点だ。それより、大学を休学して、世界放浪旅行に出かけた人の方が、引く手数多だったりする。

 「この人は勉強ができる」という理由で採用を決める企業などない。

 これは「大学の勉強が役に立たない」というより、「勉強で得られる知識は、そもそも価値が低い」ということだと思う。

 ところで、ミュージシャンやお笑い芸人のような人気商売であれば、コンピュータやロボットに代替されないと考えられる。

 では、このような人気商売で、成功するための秘訣は何か。事前に定義するのは不可能に近いが、勤勉さや専門知識より、素材と才能がモノを言うのは間違いない。

 お笑い芸人やミュージシャンが「俺はこんなに勉強した」とか「専門的なギターの演奏スキルを身に付けた」とアピールしても、無意味だ。アウトプットがイマイチなら、誰にも評価されないし、ギャラも得られない。

 今後、多くの職業が、このような素材と才能重視の人気商売になると思う。なぜなら、人気商売こそ、「コンピュータに代替されない仕事」の典型例だからだ。

 人材の世界には、「素材が全て」という考え方がある。単純に言うと、優秀な人はどんな環境でも成果を出す一方、ダメな人はいくら教育訓練を施してもダメ、というわけだ。

 努力や勤勉は、長らく日本人の美徳とされてきた。

 学校教育は画一的な「マニュアル型人材」を排出するには都合が良かったし、高度経済成長期の日本で、工場の製造ラインに必要だったのは、「マニュアル型人材」だっだ。

 しかし、努力や勤勉という価値観のもと、学校教育が排出したのは、結局、コンピュータやロボットで代替できる人材だった。

 勉強で得られる知識は、価値が低い。その証拠に「この人は勉強ができる」という理由で採用を決める企業などない。

 今こそ、「コツコツ勉強して、専門的な知識と能力を獲得する」という人材の成長モデルそのものを疑うべきときだと思う。

 山田宏哉記

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2013.6.22 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ