ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3286)

 "世の中の矛盾"とどう向き合うか 

 実生活でこんな趣旨の話をする機会があった。

 「学生の頃、『世の中の矛盾を知らなければならない』みたいな意識が強かったけど、そういう時、自分自身の生活は上手く回っていなかった。自分自身の生活にとってマイナスなら、あえて『世の中の矛盾』を知る必要はないと思う」

 「生活保護や貧困、差別や水俣病みたいなテーマの本は、読んでいると気が滅入る。社会問題に関心を持つのは立派と言われるが、一方で感情を掻き乱されて、自分の仕事をパフォーマンスを落とすリスクもある」

 まず、「今の世の中には、矛盾がある」という点については、疑問の余地はないだろう。

 建前を言えば、自衛隊は軍隊ではないし、パチンコはギャンブルではないし、ソープランドで行なわれているのは自由恋愛だ。ほんの一例だが、世の中には矛盾としか言いようがないことがたくさんある。

 そして僕たちは、沖縄の基地問題のことや北朝鮮の拉致問題、水俣病の被害者や貧困や差別の問題も、真剣に考えることを要求されている。

 あたかもそれが「善良な市民」の義務であるかのように思われている。

 一方、自力でお金を稼いで、生計を立てるようになってから、気付いたことがある。

 「世の中の矛盾」のことを考えるより、自力でお金を稼いで、生計を立てることの方が、遥かに優先度と難易度が高いということだ。

 「世の中の矛盾」が声高に叫ばれるのは、結局のところ、それがマスメディアや言論人にとっての商売ネタだからだと思う。

 多くの場合、社会問題に関心を持ち、その是非を議論するのは、当事者ではない。

 「世の中の矛盾」のことを考える余裕があるのは、基本的には、生活を保証された人だ。例えば、仕事や家を失い、路上に投げ出されたら、その日の寝場所や食事が最優先の関心事になる。「ホームレス問題」を議論している余裕などない。

 誰しも経験があると思うが、仕事やお金、身の回りの人間関係等で大きな問題を抱えた時は、ニュースを消費したり、社会問題を考える余裕はなくなる。

 ニュースや社会問題に対する意識や関心が高い人は、一見立派と思われているが、実は自分の人生を真剣に生きていないのではないか。

 本当の本当は、沖縄の基地問題も、北朝鮮の拉致問題も、水俣病の被害者のことも、別に考えなくても良いのではないか。

 社会問題に対する興味関心や意見表明は、所詮、次から次へと消費する「知的エンターテイメント」に過ぎないのではないか。

 「"善良な市民"の義務」とやらで、無理に"世の中の矛盾"を背負う必要はない。

 最優先すべきはあくまで、「自分の持ち場」であり、「自力で生計を立てる」ことだと僕は思う。

 また、「世の中の矛盾」をあれこれ議論するより、目の前の仕事に真剣に取り組み、税金を払う側に回ることの方が、結果的に世の中への貢献にもなると僕は思う。

 山田宏哉記

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2013.7.15 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ