ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3287)

 "人間的魅力"の効用と限界

 「人間的な魅力が大切」と言われれば、当たり前すぎて、反論のしようがない。

 『アップル驚異のエクスペリエンス』によると、アップルストアの店員を採用する際、重視するポイントは「知識10%、人間的魅力90%」だそうだ。背景には「接客マナーや商品知識は教育可能だが、人間的な魅力は教育不可能」という考え方がある。

 確かに、日常生活を振り返ってみても、店舗のスタッフや企業の窓口担当者に期待するのは、「人当たりの良さ」であって、「知識や技術の豊富さ」ではない。

 人間的な魅力は教育不可能で、向上のための方法論も確立されていない。それと比べると、知識や技能は、画一的な教育でも、ある程度向上させることができる。

 店舗スタッフなどであれば、まずは人当たりのいい人を採用して、必要な知識や技術は入社後に教育するのが合理的だとは思う。

 但し、「そもそも、アップルストアの店員は、魅力的な職種か?」という疑問はある。アップルストアの店員は、時給11ドルくらいだそうだ。

 しかも、アップル本社とはほぼ切り離されていて、販売員として実績を出しても、アップル本社のスタッフになれるわけではない。

 知識や技術に優れた即の人を採用するか、人柄のいい人を採用し、入社後に必要な知識や技術は教育するか。

 どちらが良いかは、業界や職種によって違ってくると思う。おそらく、サービス業や営業や接客関係の職種は人柄重視の方が良く、技術や財務系の職種は即戦力重視の方が良いと思う。

 仮に私が事業を経営するなら、例えば、受付担当なら人間性重視にするし、ウェブ担当なら即戦力重視にする。そして、どちらに高い給料を払うかと言えば、たぶんウェブ担当の方だ。

 世の中の多くの人が恋愛や結婚をしている事実を見れば、人間的な魅力のある人はたくさんいる。要は、それだけでは希少価値が低い。

 人間的な魅力は大切だが、一方、人間的な魅力だけで務まる仕事は、あまり報酬が高くならない。アップルストアの店員のように。

 平均的な学力や能力の人が、仕事を確保して、生き残るためには、やはり「人間的な魅力」が肝になると思う。

 男性であれ、女性であれ、勉強や運動、あるいは実技が苦手だと気付いたら、早い段階で「人間的魅力」を充実させる方に舵を切った方が得策だと思う。

 学校教育からドロップアウトしたヤンキーたちも、意外と挨拶や礼儀作法、上下関係を重んじる。それがこの世界で仕事を確保して、生き残っていくために、最も必要なことだとわかっている。

 元気に挨拶し、働く情熱を持ち、気配りや思いやりを大切にする。

 そうすれば、特段優れた能力がなくても、ワタミやユニクロ、あるいは自衛隊に就職できる可能性が出てくると思う。

 あまり高い報酬は望めなくても、これからの時代、「仕事があるだけでもありがたい」と考えた方が良いだろう。

 山田宏哉記

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2013.7.28 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ