ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3288)

 無駄な"やる気"の弊害 

 最近、「やる気がない」と言われる機会があった。この際なので、"やる気"について、考えてみたい。

 単に馬車馬のように働くことを「やる気」と呼ぶなら、確かに僕は「やる気」がない。

 そして、やる気は必ずしも、「あればあるほど良い」わけではないと思う。

 リソースは有限なので、時間と労力は、より価値の高いことに傾斜配分するように心掛けている。

 これは傲慢と思われても仕方がないが、今の僕は、他の人にでもできることは、わざわざ自分から「やりたい」と買って出ることはない(もちろん、必要だったり、頼まれたりしたらやる)。

 一方、自分にしかできないことに対しては、なるべく手間と時間を割くようにしている。極端な話、それが自分が存在価値だからだ。

 誰にでもできることだけをやっている人は、人員削減の対象にもしやすい。厳しい見方かもしれないが、使い捨ての消耗品と似たようなものだ。

 例えば、「今日の昼食は蕎麦にすべきか、うどんにすべきか」で迷ったとする。

 こういうことは、正直、「どっちでもいい」。そもそも、あまり手間と時間をかける問題ではない。

 ところが、会社組織の中で「どっちでもいい」と言うのは、実はかなりの勇気がいる。何となく無責任に聞こえるし、どっちでも良くなかった場合には、責任問題になる。

 こういう問題に、"やる気"を持って対処するとどうなるか。

 おそらくこんな具合になる。「『今日の昼食をソバにすべきか、うどんにすべきか』という問題に対して、『どっちでもいい』などと言う人が多いのは、けしからん。会議を開いて蕎麦とうどんの長所と短所を議論するだけでなく、モチベーションをアップするための施策も検討しなければならない」

 会社の会議で「今日の昼食をソバにすべきか、うどんにすべきか」などと議論するのはバカげている。どちらにしようと、会議を開いて議論したコストを回収できない。

 "やる気"のある人がこういうバカなことをすると、人件費がかさみ、会社の利益を圧迫する。商品の価格にも転嫁され、顧客にも迷惑をかける。最悪の場合、業績悪化で会社が倒産する。

 ところが、厄介なことに、保身のためには「ソバとうどんの長所と短所を比較検討すべきだ」と主張した方が、無難ではある。

 会社組織の中で「どっちでもいい」と言う以上、自分の判断に責任を持ち、判断が間違っていた場合には、懲戒を引き受ける必要がある。

 だからこそ、立場が弱い人ほど、指示を仰ぐ。「どっちでもいい」と言われても、「どちらか選んでください」と言って、自分で判断できない。まさに保身第一の行動だ。

 ビジネスでの「どっちでもいい」という発言に対して、「やる気のなさ」を感じる人は、肝心なことをわかっていない。

 ビジネスでの「どっちでもいい」の意味は、「両者を比較検討する手間と時間を投資する価値はないと判断する。間違っていた場合には、私が責任を取る」。つまりは、勇気ある発言なのだ。

 重要度の低い案件に手間と時間をかけない。これが、大切なのだ。

 無駄に"やる気"がある人は、これがわからない。「蕎麦とうどん」の議論ほどではないにしても、どうでもいい案件を大量に抱えて、人件費を浪費する。

 この際、企業はやる気のある人を集めて、「天気予想部」を作ってはどうだろうか。

 業務内容は「明日の天気を予想する」。明日の天気を当てるために、1日中雲の流れを監視する。やる気のある人には、まさにピッタリの仕事だろう。

 山田宏哉記

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