ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3291)

 動物の本能と人間の理性

 世の中の争点、あるいは人生の葛藤の多くは、実は、「動物の本能」と「人間の理性」のせめぎ合いだと思う。

 「そんなに単純なのか」と思われそうだが、案外、呆気ないほどシンプルなのだ。

 これは、本音と建前と言ったりもする。本音とは「動物の本能」であり、建前とは「人間の理性」である。

 政治的な問題については、いつも右(保守)と左(リベラル)の対立がある。この対立を物凄くわかりやすく言うと、「動物の本能」を重視するのが右(保守)、「人間の理性」を重視するのが左(リベラル)だ。

 重要な政策課題は、大きく言えば「動物の本能」と「人間の理性」の対立なのだ。

 物事を暴力で解決するのは、「動物の本能」なので保守になる。外交の文脈で用いれば、タカ派になる。だからこそ、保守はやたらと軍事費の増強を主張する。

 一方、物事を話し合いで解決するのは、「人間の理性」なのでリベラルだ。外交の文脈で使えば、ハト派になる。

 保守と言っても、結局は単なる「外国嫌い、外国人嫌い」に過ぎないケースが多い。在日外国人に石を投げつけたりするのは、動物的な本能である。

 普通の人は、理性の歯止めがかかるので、実際に石を投げたりしないが、中には理性の歯止めがかからない人もいる。

 体罰を巡る賛成派と反対派の論争をみても、これは「動物の本能」と「人間の理性」の争いだとわかる。

 体罰による指導は「動物の本能」そのままであり、言葉による教育は「人間の理性」の賜物である。

 もう少し突っ込んで言うと、動物の本能(保守)の核心にある価値観は、「弱肉強食の肯定」と「自己保身」だと思う。これは自然界の掟でもある。

 動物は「どちらが強いか」で物事に決着を付ける。動物の本能は、戦争や格差社会、差別や適者生存を肯定する。これらは保守の思想と直結している。

 女性が男性に求める性格は、「強さ」と「優しさ」が2大要素となっている。「強さ」を評価するのは動物の本能であり、「優しさ」を評価するのは人間の理性である。

 では、「動物の本当」と「人間の理性」では、どちらが重要なのか。これは「動物の本能」ということで、既に決着が付いていると思う。

 ザックリ言うと、世の中の9割の人は、動物的な本能だけで生きている。読書の習慣がある人は、「人間の理性」を重視する傾向が強いが、数の上では、世の中の1割に過ぎない。

 若い頃は、リベラル(人間の理性を重視)だった人が、歳を取るにつれて、保守(動物の本能を重視)になることがある。逆のパターンはあまりない。

 この現象は、知能の低下に伴い、「人間の理性」が後退し、「動物の本能」が前面に出てくるために起きると考えられる。

 動物的な本能だけで生きている人は、保守政党に投票する。戦後日本で、長らく自民党の独裁体制が続いてきたのは、日本人の大半が、人間の理性を軽視し、動物的な本能だけで生きているからだ。

 僕たちの大半は、動物の本能だけで生きている。

 暴力や殺人のない映画なんて、つまらない。動物の本能に照らすと、そういう判断になる。

 僕たちは、苦々しい顔をして、「格差の拡大は避けられない」とか「戦争をせざるを得ない」「差別や暴力は許さない」とか言うけれども、僕たちは格差社会や戦争、差別や暴力を本音の部分では肯定しているのだ。

 「それが悪い」とは言わない。但し、これが現実だと知る必要はある。そして、動物の本能が暴走しないように、人間の理性で抑えることも、やはりまた必要なのだ。

 山田宏哉記

【関連記事】
"この世にいらない人間"と動物的本能の暴走 (2013.8.20)
人間的魅力の効用と限界 (2013.7.28)
勤勉という美徳の終わり(2013.6.30)
仕事がなくて暇な会社員(2013.6.30)
勉強で得られる知識は、価値が低い(2013.6.22)
仕事が好きな人、嫌いな人(2013.6.1)
仕事に"専門的な知識と能力"は必要か(2013.4.27)
ビジネスでは、あまり努力しない方が良い理由(2013.4.20)
誰が「腐った人材」を養うのか(2013.4.13)
「パンを分け合う仲間」としての会社(2013.3.30)
なぜ、あの人は「本を読むバカ」なのか(2013.3.26)
「やればできる」の仕事論(2013.3.23)
なぜ、ユニクロの離職率は高いのか(2013.3.16)
若者よ、貯金は止めた方が良い(2013.3.12)
英語公用語化の真意(2013.3.9)
薄給の時代 、副業の損得勘定(2013.3.2)
株で勝つのが難しい理由 (2013.3.2)
残業を良しとする"村の論理" (2013.2.24)
お金を稼ぐ力、組織を泳ぐ力(2013.2.16)
「みんな」という名の不審人物(2013.2.9)
リスクヘッジとしての株式投資(2013.2.2)
勤労の国の幸福なサラリーマンたち (2013.1.27)
公務員の"駆け込み退職"騒動の本質(2013.1.26)
株式投資の「究極の目標」とは何か(2013.1.23)
シャープ株の売買で気付いたこと(2013.1.17)
"試練の場"としての株式投資(2013.1.14)
中村淳彦(著)『職業としてのAV女優』覚書(2013.1.4)
読書の費用を回収できるか(2013.1.4)
いかに「読むべき本」を確保するか(2013.1.4)
"紙本主義"の終わりとアマゾンのキンドル生態圏(2013.1.1)
信仰告白のビジネスモデル (2012.12.29)
iPhoneの防水ケースと家電量販店の終わり(2012.12.26)
なぜ、デートでサイゼリヤに行ってはいけないのか?
(2012.12.22)
ペニーオークション詐欺の教訓(2012.12.22)
汗で稼いだ一万円、投資で稼いだ一万円(2012.12.19)
実務に活かす株式投資(2012.12.15)
アウトソーシング時代の働き方(2012.12.8)
「飽きないこと」を仕事にする(2012.12.2)
ビジネスに活かす優先的選択(2012.11.27)
もしも世界が男女10人ずつの高校の教室だったら
(2012.11.25)
"ホームレス転落"という悪夢 (2012.11.24)
映画『シルク・ドゥ・ソレイユ』に学ぶ人材配置 (2012.11.18)
シュートを打つ人、パスに逃げる人 (2012.11.17)
若さゆえの飢餓感 (2012.11.17)
動物王国としての実社会 (2012.11.11)
人生を語る不誠実さ (2012.11.11)
映画『009 RE:CYBORG』覚書(2012.11.4)
なぜ、経歴を詐称するのか(2012.11.3)
愛は地球を救えない(2012.10.24)
労働貧困層と生活保護(2012.10.22)
ルサンチマンのある人生(2012.10.18)
世界は"不本意な職業"で溢れている(2012.10.15)
不本意な職業を受け入れる(2012.10.13)
僕たちは「格差社会」を望んだ(2012.9.24)
「人間好き」のファシズム (2012.9.17)
強者はデモに参加するか(2012.9.15)
撤退戦としての介護(2012.9.1)
「仲間外れ」の構造(2012.6.26)
反知性主義の国・日本(2012.6.24)
日本人の7割には、中学の教科書レベルの知識もない
(2012.6.23)
読書を実務に活かす暗黙のプロセス (2012.6.23)
教職に逃げる大人たち (2012.6.21)
あの人が嫌われる理由 (2012.6.4)
最近の若者はバカばかり(2012.5.26)
「カネのため働く」という建前(2011.12.25)



2013.8.24 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ