ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3292)

 仕掛けと手仕舞いの仕事論

 相場の用語になるが、「仕掛け」と「手仕舞い」という言葉がある。資金を投入してポジションを取る瞬間を「仕掛け」と呼び、ポジションを解消して現金を回収することを「手仕舞い」と呼ぶ。

 「仕掛け」と「手仕舞い」ではどちらも大切だが、「仕掛け」の方がより重要だ。仕掛け時を間違えて、「高値掴み」をすると、それだけで負けが確定してしまう。

 この「仕掛け」と「手仕舞い」の考え方は、実ビジネスの世界でも役に立つ。

 最も、大きな枠組みで言えば、就職が「仕掛け」に相当し、退職が「手仕舞い」に相当する。そして、退職より就職の方が大切であるのは言うまでもない。

 しかし、いきなり就職で失敗する人が多い。

 人気企業に就職するのは、相場で言う「高値掴み」になる可能性が高い。

 一昔前、日本の家電メーカーや半導体のメーカーは、就職先として人気だった。ところが、今やこれらの企業は、業績不振で会社存亡の危機にある。実際、会社の統廃合や人員削減が相次いでいる。

 難易度の高い就職試験を突破し、家電メーカーや半導体のメーカーの企業に就職した人は、「仕掛け」を誤った可能性が高い。

 一般的には「優秀な人は優良企業に就職する。無能な人はブラック企業に就職する」と思われているが、世の中はそれほど単純ではない。

 優秀な人に人気で、入社難易度の高い企業が、業績不振で低迷することもある。無能な人でも、優良成長企業に就職できることもある。

 私見では、素材や重化学工業、資源関係、総合商社などは、就職難易度と比較して、「割安」だと思う。一方、マスコミ、広告代理店、家電メーカー、コンサルタント会社、銀行などは就職難易度と比較して、「割高」だと思う。

 悪評をよく聞くワタミやユニクロは、僕なら「中立」と判断する。

 小売や飲食業界に就職する学生は、自分があまり優秀ではないことを自覚しており、労働条件が悪いことは覚悟していると思う。小売や飲食業界が嫌だからと言って、贅沢を言える立場にはない。

 他に行き先がない人にとっては、小売や飲食業界への就職は、悪い選択ではないと思う。

 僕の判断では、小売や飲食業界に就職した人より、広告代理店や家電メーカーに就職した人の方が、就職難易度との比較で、はるかに「損」をしている。

 仕掛け(就職先)を誤った際、対応策は2つしかない。

 「損切り」をするか、「塩漬け」にするか、である。要は「転職するか、勤務を続けるか」の判断が必要になる。これは「より損失の少ない方」を選ぶしかない。その意味でも、最初の仕掛けを間違えてはいけないのだ。

 着任と退任あるいはプロジェクトの開始と終了などでも、仕掛けと手仕舞いの局面が発生する。着任時と退任時の差分、プロジェクト開始前と終了後の差分が、自分の「成果」になる。

 仕事の仕掛けと手仕舞いは、1日単位でも発生する。朝の勤務開始が仕掛け、夕方の勤務終了が手仕舞いになる。私見では、仕事がイマイチな人は、手仕舞いが下手だ。ダラダラと深夜まで残業して、翌日、体調不良で休んだりする。

 もっと細かく見ると、日常会話にも、仕掛けと手仕舞いがある。相手に話しかける(相手の意識に介入する)タイミングが仕掛けであり、話を終えるタイミングが手仕舞いとなる。そして、話しかける前と後の差分が、「会話の成果」となる。

 更に言えば、人間関係にも、仕掛けと手仕舞いがある。例えば、結婚で仕掛けて、離婚で手仕舞いする。

 但し、人間関係の「手仕舞い」は、極力、少ない方が良い。その意味では、「不適切な人」とは最初から関係を持たない方が良いと思う。

 いずれにしても、大切なのは「勝てるタイミング」を見極め、そこで仕掛けることだ。無理なタイミングでは仕掛けない。そして、一定の成果が出たら、手仕舞いにする。

 短期であれ、長期であれ、「仕掛け」と「手仕舞い」のリズム感を掴んでいると、仕事の成果が大きくなり、失敗のダメージを抑えることができると僕は思う。

 山田宏哉記

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2013.8.24 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ