ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3293)

 ウェブへの上場と不特定多数による評価 

 ウェブとは「個人が上場する株式市場」である。この枠組みを使うと、ウェブの本質を明確に理解することができる。

 企業には、上場企業と非上場企業がある。

 企業が株式市場に上場すると、企業の社会的信用が向上し、資金調達も容易になる。その一方、市場で株式が売買されるようになり、不特定多数の投資家の評価に晒されることにもなる。

 投資家の企業に対する評価の結晶が、「株価」である。株価は、刻一刻と上下する。そして投資家は、基本的には、株価が割安の企業の株を買い、割高になったら売る。

 上場企業の使命は、不特定多数の株主(投資家)の期待に応え、業績を伸ばし、利益を株主に還元することだ。

 実は、ウェブで、株式市場と同じ仕組みで機能している。但し、ウェブ上の通貨は、「評価」であり、「評判」が売買されている。

 ウェブが普及する前、一部の有名人を除いて、人間関係は、身近な人々の間で完結させるのが当たり前だった。

 もちろん今でも、地元のコミュニティで人間関係を完結させる人々はたくさんいる。それはひとつの生き方であり、他人がとやかく言うことではない。

 但し、ウェブの普及以降、もうひとつの選択肢が生まれた。「ウェブに上場する」という選択である。

 個人もウェブに上場すれば、知名度向上や資金調達面でのメリットがある。その一方、「不特定多数からの評価を引き受けること」をも意味する。

 企業が株式市場に上場するのと、個人がウェブに上場するのは、「信用の向上や資金調達を可能にする一方、不特定多数の評価を受け入れる」という意味で、実は同じことなのだ。

 よく観察するとわかるように、ウェブとは「不特定多数が評判を売買する場」である。

 全体としてみれば、ウェブにおける表現の基本形は、「良いものを褒め、悪いものを貶す」というものだ。

 細かく見れば、「いいね」を連発するロング(=褒める)専用の場もあれば、匿名掲示板のようにショート(=貶し)専用の場もある。この辺りについては、各人が自分のスタイルに合う場所やツールを活用すればいい。

 グーグルやアップルのようなIT企業は「評判の売買」の手助けとなる場所やツールを提供することで利益をあげる。

 ウェブに上場した個人は、褒められれば評判(株価)が上がり、貶されれば評判(株価)が下がる。犯罪自慢などで株価が暴落した個人は、上場廃止(アカウントの閉鎖)に追い込まれる。

 ウェブに上場した個人は、不特定多数の期待に応えなければならないことだ。実生活で友達であるとか、ないとか、そんなことは関係ない。

 時々、ウェブに上場した人が「知り合いでもないのに失礼だ」とか「匿名は卑怯だ」などと発言することがある。この手の発言は、ことごとく間違っている。

 繰り返すが、ウェブへの上場は「不特定多数の評価に晒されること」を意味する。そして、「不特定多数からの評価を引き受けること」こそ、ウェブ上場の本質である。

 企業は自社の株価を上げるべく、様々な施策を打つ。ウェブに上場した個人にとっても、不特定多数の人々から評価を獲得し、自分の評判を上げることが、最も大切なことだ。

 嫌なら、ウェブへの上場を廃止すれば良い。誰も止めはしない。知名度向上と資金調達のために、不特定多数の評価を引き受ける決意をしたのは、自分自身のはずだ。

 ウェブは全く新しい技術と考えられているが、ウェブを貫く基本原理は、実は株式市場と同じなのだ。

 山田宏哉記

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2013.9.16 記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ