ジョン・スミスへの手紙
サイバー・ラボ・ノート (3295)

 もしも、日本人の8割が"歩行指導員"だったら  

 「自転車指導員」という超重要な仕事がある。

 一日中、駐輪禁止の場所に立って、自転車が駐輪しそうになったら、「ここに止めちゃダメ」と言うのが仕事だ。「なんて超重要な仕事なんだ!」と感動するに違いない。

 もともと、「働く」の語源は「傍(はた)を楽(らく)にする」とされる。

 原理的には働く目的は「周囲を楽にするため」である。物資不足の時代は、週5で働いて給料を稼いで、テレビや洗濯機、冷蔵庫を買えば、「傍を楽にする」ことにつながった。この頃は、確かに「汗水垂らして働くのが美徳」だった。

 今は週5で一生懸命働いてまで、欲しいモノはあるだろうか。少なくとも、僕にはない。

 一生懸命働いても、なかなか「傍を楽にする」ことに繋がらなくなっている。それでも、食費や家賃のような生活運転資金は必要なので、多くの人は、あまり意味のない仕事をして、生活運転資金を稼いでいる。

 豊かな社会には、あまり意味のある仕事はない。物資も人も余っている。

 日本のビジネスシーンでは、「適材適所」という言葉を使う。「まず、人材ありき」で、「どうやってその人たちにメシを食わせるか」を考える。

 利益を追求するなら「適所適材」であるべきだが、日本企業の本業は「雇用事業」なので、これはこれで良いと思う。

 更に言えば、企業の社会的責任とは、何も新興国で井戸を掘ったり、木を植えたりすることではない。「稼げない労働者を雇って、生活費を支給すること」こそ、企業が果たしている社会的責任である。

 稼げない人材でもそれなりに忙しそうなのは、公平性を担保して、2割の優秀な人材の勤労意欲を維持するためだ。

 生産性だけをみれば、優秀な2割の人材が働いて、残りの8割は生活保護の受給者でも問題はないと思う。しかし、これでは2割の人材の勤労意欲がもたない。だから、残りの8割の人材にも「あまり重要でない仕事」を与えて、公平性を担保することが必要になる。

そこで僕は、8割の日本人が従事できる、超重要な仕事を提案したい。名付けて、"歩行指導員"である。

 仕事内容は「1日中、街中の歩行者を監視し、不審者がいたら警察に通報する」というものだ。

 これは、超重要でやりがいのある仕事だ! モノ余りの現代において、これほど超重要な仕事は"歩行指導員"をおいて他にない!

 仮に日本の労働者を、重要な仕事をする2割の人材と、超重要な「歩行指導員」をする8割の人材に分ければ、優秀な2割の人材は、「歩行指導員」が日給1万円を受け取ることに納得すると思う。

 そして、「歩行指導員」は生活保護受給者に対して、「汗水垂らして働くのは尊い。働かざる者、食うべからず」と偉そうに説教することだろう。

 安易に「"歩行指導員"なんて、意味ないじゃん。無理やり職を作っているだけ」などと言ってはいけない。

 "歩行指導"が無理やり作った仕事なら、介護や教育、警備だって、無理やり仕事を作っているようなものだ。

 職業に貴賎はない。汗水垂らして働くのは尊く、"歩行指導"は超重要な仕事なのだ。わかったか。

 ちなみに、"超重要"とは「重要という概念を超えている」ことを意味しており、つまりは「重要ではない」と同じ意味です。

 山田宏哉記

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2013.9.21  記事一覧へ戻る 文筆劇場・トップ